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阿弥陀様の深い慈悲に触れる ~第35願「女人往生の願」をわかりやすく解説~

はじめに
阿弥陀様(阿弥陀如来)は、私たちが幸せになるために、たくさんの願い(四十八願)を立てられました。その中でも、35番目の「女人往生の願(にょにんおうじょうのがん)」は、特に女性に深く寄り添う、温かいメッセージが込められた特別な誓いです。
今回は、この「女人往生の願」について、その意味や背景を分かりやすくご紹介します。


阿弥陀様の特別な約束「女人往生の願」とは?
まずは、その誓いの言葉を見てみましょう。少し難しい言葉ですが、読み仮名をつけました。
第三十五願 女人往生の願
 設(せつ)我(が)得(とく)佛(ぶつ)・十方(じっぽう)無量(むりょう)・不可思議(ふかしぎ)・諸佛(しょぶつ)世界(せかい)・其(ご)有(う)女人(にょにん)・聞(もん)我(が)名(みょう)字(じ)・歡(かん)喜(ぎ)信(しん)樂(ぎょう)・發(ほつ)菩提(ぼだい)心(しん)・厭(えん)惡(の)女身(にょしん)・壽(じゅ)終(じゅ)之(し)後(ご)・復(ぶ)爲(い)女(にょ)像(ぞう)者(しゃ)・不(ふ)取(しゅ)正(しょう)覺(がく)

これを、もっと分かりやすく言い換えると、こんな意味になります。
【分かりやすい現代語訳】
もし私が仏(阿弥陀様)になったなら…
あらゆる世界にいる女性が、私の名前(南無阿弥陀仏)を聞いて、心から喜び信じ、本当に幸せになりたい(悟りを得たい)と願い、そして『女性であることの悩みや困難から解放されたい』と心から願ったとします。
その女性が、命を終えた後に、もし再び女性の姿として生まれてしまうようなことがあるならば、私は決して仏にはなりません!」

つまり、阿弥陀様は**「私の名前を信じてくれる女性は、次の世で再び女性として生まれる苦労を味わうことは絶対にない。必ず私が救いとってみせる」**と、力強く誓ってくださっているのです。
なぜ「女性のための願い」が生まれたの?
この願いが立てられた背景には、当時の社会や仏教の中での女性の立場が関係しています。
* 昔の考え方(一部): 大昔のインドなどでは、社会的な立場や、女性特有の身体的なことから、「女性は男性に比べて仏様の教えを実践し、悟りを開くのが難しい面がある」と考える人もいました。(これは仏教全体の考え方ではなく、あくまで一部の捉え方です)。そのため、熱心に仏道を目指す女性の中には、「女性のままでは、本当の幸せ(悟り)にはたどり着けないのでは…」と悩み、来世では男性に生まれ変わりたいと願う人もいたのです。


* 「女性の身を厭う」気持ちの本当の意味: 願の中にある「女身を厭悪(えんお)せん(女性の身を厭い嫌う)」という言葉は、現代の感覚からすると少しショッキングかもしれません。しかし、これは単に「女性であることが嫌だ」という自己否定ではありません。むしろ、当時の状況の中で、「女性であることで感じる様々な困難や苦しみから解放されて、もっとまっすぐに仏様の教えを学びたい、悟りに近づきたい」という、切実で真剣な願いの表れだったのです。それは、現状から一歩踏み出して、より良い状態へ向かいたいという向上心とも言えます。


阿弥陀様の深い思いやり
阿弥陀様は、そんな女性たちの深い悩みや、真剣な願いを、誰よりも深く理解されていました。そして、彼女たちが抱える(当時の価値観に基づく)不安を取り除き、誰もが安心して救われる道を約束するために、この第35願を立てられたのです。
「私の名前(南無阿弥陀仏)を信じ、私の国(極楽浄土)へ生まれたいと願うならば、性別など関係ありません。必ず浄土へ迎え入れ、そこでは性別による悩みなどない、清らかな存在として、安心して仏道に励むことができるようにしましょう」
これが、阿弥陀様の力強く、そして限りなく優しいメッセージなのです。


あなたも、私も、必ず救われる
この「女人往生の願」は、阿弥陀様の救いが、男性や女性といった性別に関係なく、すべての人々に平等に開かれていることをはっきりと示しています。
たとえ、あなたが今、どんな悩みや困難を抱えていたとしても、阿弥陀様は「大丈夫だよ」と、あなたに寄り添ってくださっています。阿弥陀様の名前を呼び、信じる心があれば、女性は女性であることのハンディキャップ(と、かつて考えられていたもの)を感じることなく、極楽浄土へ往き、そこで必ず本当の幸せ(悟り)を得ることができるのです。


まとめ
第三十五願「女人往生の願」は、
* 困難や悩みを抱える女性たちへの、阿弥陀様の深い共感と寄り添い
* 性別に関係なく、すべての人を平等に救うという阿弥陀様の決意
* 阿弥陀様を信じる女性は、必ず苦しみから解放され、浄土で悟りへと導かれるという確かな保証
を示しています。
この願いは、時代を超えて、私たち一人ひとりに希望と安心を与え続けてくれる、阿弥陀様の温かい眼差しそのものと言えるでしょう。


今日の一句
もろ人は南無阿弥陀仏の名を聞きて 仏を信じ後生をまかせ