わさびの辛さは「痛み」だった!
日本人の4人に1人が持つ「敏感遺伝子」の正体
お寿司で涙が出るのは、あなたのセンサーが高性能だからかもしれません。
「お寿司は大好きだけど、わさびはどうしても鼻に来て辛い…」
「海外のYouTuberがわさびを大量に食べているけど、信じられない!」
そんなふうに思ったことはありませんか?実はその感覚の違い、単なる「慣れ」や「根性」の問題ではありません。最新の遺伝子研究により、私たち日本人の感受性には世界でも珍しい特徴があることがわかってきました。
1. 日本人の「わさび感受性」分布図
わさびのツーンとする刺激を感じ取るセンサー(TRPA1遺伝子)には、生まれつき「標準タイプ」と、痛みに敏感な「高感度タイプ」が存在します。
国際的なゲノムデータをもとに、日本人の割合を推計すると、驚きの結果が見えてきます。
日本人のわさび感受性タイプ(推定)
※欧米人(白人)の場合、敏感なタイプは全体のわずか3%程度しかいません。日本人(東アジアも)は世界的に見て「わさびの痛みに敏感な人」が多い集団なのです。
| タイプ | 特徴 | お寿司屋さんでの反応 |
|---|---|---|
| ふつう (GG型) |
標準的な感受性。 欧米人の97%がこれ。 |
「わさびの香りがいいね」と風味を楽しめる。 |
| 敏感 (GA型) |
4人に1人の隠れ敏感。 センサーが高性能。 |
「結構ツーンとくるな…」と思いながらも食べる。冷たい水もしみやすい。 |
| 超敏感 (AA型) |
50人に1人のレアタイプ。 センサーが超高性能。 |
「痛い!無理!」サビ抜きでないと食事が苦痛になるレベル。 |
2. なぜ日本人は「敏感」に進化したのか?
「敏感=痛い」なら、進化の過程で淘汰されてもおかしくありません。なぜ日本には、欧米に比べて約8倍も「敏感タイプ」が多いのでしょうか?
実は、この敏感さには生存にかかわる重大なメリットがあったと考えられています。
わさびセンサー(TRPA1)は、実はわさびだけでなく「有害物質」や「細菌」を検知する警報機でもあります。
- 腐った食べ物の回避: 湿気の多い日本ではカビや腐敗菌が繁殖しやすい。敏感な舌は、わずかな毒素を「痛み」として瞬時に検知できました。
- 肺炎の予防: 喉のセンサーが敏感だと、異物が入った瞬間に「咳(せき)」をして追い出せます。これにより、高齢者の命を奪う「誤嚥性肺炎」のリスクが下がる可能性があります。
つまり、わさびが苦手な人は「毒物や異物から身を守る能力が高い、防御力特化型の人」と言えるのです。
3. 結論:わさび嫌いは「才能」である
もしあなたがわさびを食べて涙が出たり、どうしても食べられなかったりしても、恥じる必要は全くありません。
それはあなたの体が「高性能なセンサーで全力であなたを守ろうとしている証拠」です。欧米人が驚くような量を平気で食べるのは、単にセンサーの感度が私たちと違うからに過ぎません。
「私は選ばれし高感度タイプだから、サビ抜きで!」
これからは、そんなふうに堂々と注文してもいい科学的な理由があるのです。