「EVはオワコン」は本当? データで見る「EV失速」のウソとホント
「最近、EV(電気自動車)ってあんまり売れてないよね」
「やっぱりハイブリッドが最強なんじゃない?」
最近、こんな声をよく耳にしませんか?
実際、トヨタや日産が日本国内でのEV用電池工場の計画を見直した、というニュースも流れました。「やっぱりEVはダメだったか…」と思った方も多いかもしれません。
しかし、その認識、「半分ホントで、半分ウソ」かもしれません。
EVについて調べてみると、「EV失速」という言葉だけでは片付けられない、複雑な世界の「今」が見えてきました。
この記事では、データをもとに「EV市場で本当に起きていること」と、「トヨタ・日産の戦略変更の裏側」を、誰にでも分かるように徹底解説します。
🧐 第1章:「EV失速」はウソ? 世界全体では「まだ売れていた」
まず驚きの事実から。
「EVは売れてない」というイメージとは裏腹に、世界全体で見ればEV販売は今も力強く成長しています。
データによれば、2025年第1四半期の世界のEV販売台数は、前年同期比で35%も増加しています。これは、世界の新車販売の「4台に1台」がEVという時代に突入したことを意味します。
特にこの成長を引っ張っているのが、中国と、タイなどの東南アジアやラテンアメリカといった新興国です。中国では、新車の半分以上(51%)がEVかプラグインハイブリッド(PHEV)になる予測で、まさに「EV先進国」となっています。
🤔 第2章:じゃあ、なぜ「EVは売れてない」と感じるのか?
世界全体では売れているのに、なぜ私たちは「失速感」を感じるのでしょうか?
その理由は、大きく分けて2つあります。
1. 欧米市場が「踊り場」にいるから
これまでEV市場を引っ張ってきたヨーロッパやアメリカで、成長が急激に鈍化しています。これは「失速感」の最大の原因です。
なぜ欧米で売れ行きが鈍ったのか?
- 補助金が減った、終わった(ドイツなどで顕著)
- 金利が高い(高額なEVのローンが組みにくい)
- 車両価格がまだ高い
- 充電インフラがまだまだ不十分(「充電切れたらどうしよう」という不安)
- 性能への不安(寒冷地での性能低下や、高額なバッテリー交換費用への恐怖)
これまでは、「新しいモノ好き」のアーリーアダプター層がEVを買ってきました。しかし、これから「一般の人(アーリーマジョリティ)」に普及していくには、こうした現実的なハードルがまだ高いのです。
その結果、欧米では「(EVはまだ早いから)やっぱりハイブリッド(HV)で良くない?」という流れが強まり、HVが再評価されています。
2. 日本が「ハイブリッドの砦」だから
もう一つの理由は、私たち自身が「日本市場」にいるからです。
日本の新車市場は、世界でも類を見ないほど特殊です。なんと、新車販売の約60%がハイブリッド車(HV)なのです。
一方で、EV(BEV)とPHEVを合わせても、シェアはわずか3%強。
これだけHVが強く、EVが売れていない日本にいると、「EV? 全然見かけないね」「やっぱりEVは売れてないんだ」と感じるのは、ある意味当然のことなのです。
🏭 第3章:トヨタ・日産の「電池工場計画変更」の本当の理由
このタイミングで、トヨタと日産が国内の電池工場計画を見直したことは、「EVオワコン説」を補強するように見えます。
しかし、両社の事情はまったく異なります。これは「EVからの撤退」ではありません。
トヨタ:「HVが売れすぎて忙しい」から(日本)
トヨタは、日本国内の電池工場計画を「中止」ではなく「遅らせる」ことにしました。
なぜか?
それは、今「想定外に売れまくっているHV」の生産にリソース(人やお金)を集中させるためです。
トヨタの戦略は「EV撤退」どころか、むしろ逆です。
アメリカのノースカロライナ州では、巨額の投資(累計139億ドル!)を続けて、HV用・PHEV用・EV用のすべてに対応できる「マルチパスウェイ」な巨大電池工場を予定通り推進しています。
つまり、トヨタは「(今、絶好調の)HVで莫大な利益を稼ぎながら、その利益を(将来のための)次世代電池に投資する」という、極めて強かな「全方位」戦略をとっているのです。
日産:「会社が赤字でツラい」から(日本)
一方、日産は、福岡県で計画していた低コスト電池(LFP)の工場計画を「中止」しました。
これは、日産が「EVの将来性を悲観した」からではありません。
背景にあるのは、同社の深刻な経営不振です。
日産は、主要な中国・北米市場での販売不振により、2025年3月期に6,710億円(!)という巨額の赤字を計上しました。
巨額の赤字を抱える企業にとって、2028年まで利益を生み出さない1,500億円規模の先行投資は、たとえ戦略的に重要であっても、維持することができませんでした。
シンプルに言えば、「将来の投資(EV電池)よりも、今日の赤字補填(コスト削減)」を優先せざるを得なかった、というのが日産の台所事情です。
🏁 結論:EV市場は「失速」ではなく「分岐」している
ここまで見てきたように、EV市場は「終わった」わけではありません。
むしろ、「次の時代」に進むための大きな「分岐点」に立っています。
- 市場の分岐:
中国や新興国は「イケイケで成長中」。
欧米は「ちょっと休憩(踊り場)」に入り、価格やインフラの課題と向き合っている。 - 消費者の分岐:
「新しいモノ好き」の時代は終わり、これからは「一般の人」が納得する、安くて、安心で、便利なEVが求められる。 - メーカーの分岐:
トヨタのように「HVで稼ぎながら全方位に備える」勝者と、日産のように「本業の不振で将来の投資を断念せざるを得ない」苦しい立場に分かれ始めている。
「EV失速」というシンプルな言葉の裏には、こうした複雑な現実が隠されています。
これからは、中国メーカーの低価格EVがどこまで世界に広がるのか、そして日本メーカーが得意なハイブリッド車や、次世代の「全固体電池」などがどう戦っていくのか、注目していくと面白いかもしれません。
次にEVは作るのにエネルギーもかかるし価格も高い。実際にどのくらいはしればガソリン車に比べてエコになるのか調べてみました。次の記事をご覧ください。
EVは本当にエコ?ガソリン車とCO2排出量を徹底比較【2025年最新分析】 - 月影
さらに、EVのバッテリーを交換するのにすごい値段がかかるし、寿命が短いとするとお得でないのではと考えてそれを調べた記事を書いています。