百貨店を超えた「個客業」へ。
三越伊勢丹HDが決算で示した
デジタル外商と中国戦略の勝算
2026年3月期 第2四半期決算において、三越伊勢丹ホールディングスは営業減益ながらも純利益で過去最高を更新しました。表面的な数字の裏にあるのは、デジタルとリアルを融合させた「新しい外商モデル」の確立と、したたかな「中国・インバウンド戦略」です。
1. デジタル外商:「勘と経験」から「データ予測」へ
今回の決算で特筆すべきは、単なる「ECサイトでの販売」ではなく、「デジタルで顧客を知り(識別化)、リアルな外商員が動く」というハイブリッド戦略の成功です。
購買予測モデルの実装
従来、外商員の個人的なスキルに依存していた提案業務に、デジタルによる「購買予測モデル」が導入されました。これにより、顧客の潜在的なニーズをデータが弾き出し、外商員が的確にアプローチする体制が整いつつあります。結果として、識別顧客(ID管理された顧客)の売上高は着実に拡大しました。
地方を変える「拠点ネットワーク」
デジタルカタログと物流網の整備により、地方店舗の顧客に対しても、新宿本店・日本橋本店の圧倒的な在庫を提案可能になりました。これを「拠点ネットワーク」と呼び、扱高は前年比2桁増を記録。「地方にいながら本店の買い物ができる」体験は、地方外商の収益性を劇的に改善しています。
なぜ営業減益でも評価できるのか?
営業利益のマイナスは、主に昨年のインバウンド特需(円安・価格改定前の駆け込み)の反動によるものです。この特殊要因を除けば、国内の「識別顧客」による基盤収益は強化されており、ビジネスモデルの質は向上していると判断できます。
2. 疑問視される「中国事業」の真の目的
中国経済の減速が叫ばれる中、三越伊勢丹は現地店舗を整理しつつも、完全撤退はせず一部拠点を維持しています。送金規制のリスクがありながら、なぜ現地法人を残すのでしょうか。その答えは「日本への送客装置」としての役割にあります。
3. 結論:フェーズは「集客」から「生涯顧客化」へ
三越伊勢丹の戦略は、不特定多数を待つ「館業」から、特定の顧客と深く長く付き合う「個客業」へと完全にシフトしました。
デジタルアプリで40万人規模の海外顧客と接点を持ち、AIによる予測で国内富裕層の財布を開く。そのための「アンテナ」として中国拠点を活用する。この一貫した戦略が、今回の中間決算における純利益最高益更新の土台となっています。