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日々の雑感

【2026年最新】鳥取大学発FUVACとは?がん治療を変える次世代ウイルスの仕組みと展望

 

鳥取から世界へ。がん治療の常識を覆す「FUVAC」の正体

2026年、国立大学発のウイルス療法がいよいよ臨床の舞台へ

デリタクトの次に来る「本命」は何か?

2021年の「デリタクト(G47Δ)」承認以降、日本の腫瘍溶解性ウイルス(OV)療法は着実に進化を遂げてきました。関連する記事をご覧ください。

【第3回】国産ウイルス薬?デリタクト(脳腫瘍)とテロメライシン(食道がん)の世界競争力と今後の展望 - 月影

しかし、これまでの治療には一つの大きな課題がありました。それは、「ウイルスを腫瘍に直接注射しなければならない」という点です。

この限界を突破し、全身の転移がんにも対抗できる可能性を秘めた技術が、鳥取大学医学部の中村貴史教授らのグループが開発した「FUVAC121」です。

FUVACが持つ3つの「革命的メカニズム」

FUVACは従来のウイルス療法とは一線を画す、3つの特徴を備えています。

1. 「細胞融合」でがんを包囲する

FUVACの最大の特徴は、感染したがん細胞同士をくっつけて巨大な細胞塊(シンシチウム)を作る能力です。これにより、ウイルスが細胞の外に出ることなく隣のがん細胞へ広がるため、血液中の「中和抗体」に邪魔されずに効率よく増殖できます。

2. 冷たいがんを「熱いがん」に変える

免疫細胞が攻撃できない「Cold Tumor(冷たい腫瘍)」に対し、FUVACは免疫活性化因子(IL-12やCCL21)をがん組織内で放出させます。これにより、がんを「炎症状態(Hot Tumor)」へと変え、患者自身の免疫系ががんを認識・攻撃できる状態を作り出します。

3. 「アブスコパル効果」による全身治療

局所に投与されたウイルスが、全身の免疫をトレーニングする。これにより、ウイルスを直接打っていない遠隔の転移がんまで退縮させる効果(アブスコパル効果)が期待されています。

【最新ニュース】2025年12月、ついに製造体制が確立!

2025年12月22日、鳥取大学は台湾の医薬品開発製造受託企業(CDMO)であるTFBS Bioscienceとの間で、FUVAC121の製造委託契約を締結しました。アカデミア発の創薬における最大の壁と言われる「製造(GMP準拠)」を突破したことで、2026年からの臨床試験開始に向けた準備が整いました。

【詳細データ】FUVAC121の開発体制・資金源・協力企業一覧

FUVAC121のプロジェクトは、単なる一大学の研究に留まらず、国・地方・民間が一体となった強固なバックアップ体制の下で進められています。

  • 国のお金の出所 日本医療研究開発機構(AMED)
    革新的がん治療実用化研究事業など、複数の国家プロジェクトに採択。公的資金による支援が開発の初期段階から継続的に投入されています。
  • 製造・開発協力 TFBS Bioscience Inc.(台湾)
    2025年12月に製造委託契約を締結。世界基準(GMP)に準拠した治験薬の製造・品質管理を担う戦略的パートナーです。
  • 知的財産・ライセンス KaliVir Immunotherapeutics(米)/ アステラス製薬
    鳥取大学中村教授らの基盤技術は、米KaliVir社を介してアステラス製薬とも独占的ライセンス契約が結ばれており(VETプラットフォーム)、グローバル展開の道筋が確保されています。
  • 地方行政の支援 鳥取県米子市
    地方創生の目玉として、県知事直轄の支援体制を構築。「鳥取大学創薬スタートアップ」の育成と、地域雇用の創出を含めた強力な後押しが行われています。
  • 投資・資金提供企業 国内主要ベンチャーキャピタル(VC)
    大学発の技術商用化を目的としたファンドや、再生医療分野に特化した複数のVCが、シリーズA・Bを通じた資金調達に参加しています。

なぜ「ワクシニアウイルス」なのか?

第一三共のデリタクトが「ヘルペスウイルス」をベースにしているのに対し、FUVACは「ワクシニアウイルス(天然痘ワクチンとして実績があるもの)」をベースにしています。

特徴 ヘルペスウイルス型 (第一世代〜) 次世代ワクシニア型 (FUVAC)
主な投与方法 腫瘍内投与(直接注射) 静脈内投与への適性が高い
拡散力 比較的緩やか 細胞融合能により迅速に拡大
免疫活性化 部分的 多重武装化により強力に誘導

2026年、私たちは「がん治癒」の目撃者になるか

これまでのウイルス療法は「延命」や「局所制御」が主目的でしたが、FUVACが目指すのは「免疫チェックポイント阻害剤が効かない難治性がんの根治」です。

鳥取県知事も「死の谷を乗り越えるためのサポートを惜しまない」と明言しており、産官学が一体となったこのプロジェクトは、日本のバイオベンチャー史において極めて重要なマイルストーンとなるでしょう。

このウイルス薬がどのようにしてがん細胞を処理していくのか深掘りした記事をご覧ください。

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