【銘柄分析】「古い富士通」はもういない?
純利益7.3倍の衝撃。株価好調の裏にある「稼ぐ力」と「抱える爆弾」
「富士通」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?
「昔のパソコンメーカー」「お堅い役所のシステムを作っている会社」……。
もしそう思っているなら、その認識はすぐにアップデートする必要があります。
実は、2025年10月に発表された最新決算(中間期)で、富士通は純利益が前年比7.3倍(+635%)という驚異的な数字を叩き出しました。
なぜこれほど利益が出ているのか? これは一時的なバブルなのか、それとも本物の実力なのか?
最新データをもとに、変貌する巨人の「実態」と、投資家が警戒すべき「リスク」を解説します。
1. 何が起きている?:ハードウェアから「サービス」への大転換
かつての富士通は「モノを作って売る」会社でしたが、今は完全に別物です。
直近の決算では、売上自体はほぼ横ばい(+0.9%)ですが、営業利益は2.4倍(+145%)に急増しています。
利益激増の3つの理由
「売上規模を追わず、利益率を追う」という戦略が数字にはっきり表れています。
特に注目すべきは、資産売却で得た現金です。手元資金(現金同等物)は半年で約3,200億円から約6,470億円へと倍増しました。これが次の成長投資の原資になります。
2. ここが強い!:世界レベルの技術力「富岳」と「AI」
財務が綺麗になっただけでなく、富士通には他社にはない強力な武器「技術の蓄積」があります。
- スーパーコンピュータ「富岳」: 世界ランキング常連の実力は本物。創薬やAI開発の基盤として国のインフラを支えています。
- 独自のAI技術: 他社のAIを使うだけでなく、自社で「省電力CPU」や「企業向けAIエージェント」を開発できる技術力は、中長期的な競争優位(堀)となります。
3. 注意!:抱えている「2つの爆弾」
業績は絶好調ですが、投資家として絶対に無視できない「巨大なリスク」が2つあります。手元の現金が倍増したとはいえ、これらは株価の重石になり得ます。
① 英国の「冤罪事件」スキャンダル
英国史上最悪と言われる「ポストオフィス事件」。
元々は、富士通が買収した英ICL社製の会計システムに端を発する問題で、バグが原因で多数の郵便局長が冤罪となりました。
富士通は道義的責任を認め、英政府と協力姿勢を示していますが、最終的な補償負担額はまだ確定していません。今後、数百億円規模の負担が発生する可能性もあり、せっかく積み上げた利益への影響が懸念されます。
② 国内の「マイナンバー」トラブルと信頼性
コンビニ交付サービスでのトラブル等により、行政システムにおける「信頼」が揺らぎました。
政府からの指名停止措置などは解除されつつありますが、再びトラブルが起きれば「退場」を迫られるリスクがあります。
4. 結論:富士通株は「買い」なのか?
【ポジティブ要素】
- 構造改革が完了し、純利益7倍、手元現金6,500億円という「最強の財務体質」が完成した。
- 本業のサービス事業もしっかり稼げている。
【ネガティブ要素】
- 英国の補償問題の金額が確定するまで、不透明感が残る。
- 過去の株価上昇ですでに好材料が織り込まれている可能性がある。
「6,500億円の現金を使って、次に何をするか(M&Aや自社株買い)」に期待するなら買いの好機です。一方で、「英国の問題が片付くまで静観する」のも賢明な判断でしょう。