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【詳細編B】中国依存の恐怖:医薬品とEV電池材料で進む「チョークポイント」化と供給リスク

 

【詳細編B】恐怖のチョークポイント:医薬品と電池材料の中国依存リスク

要旨:「もし明日、中国からの輸入が止まったら?」——私たちの生活は即座に立ち行かなくなります。ビタミン、抗生物質、EV電池材料。中国が世界シェアの9割近くを握り、戦略的に構築した「サプライチェーンのチョークポイント(窒息点)」の実態と、その恐るべき意図を解説します。

はじめに:見えない「首輪」

前回の【詳細編A】では、中国が経済合理性を無視して化学品を増産している実態をお伝えしました。しかし、本当に怖いのは「量」ではありません。「質」です。サプライチェーンボトルネック(ブログの図はgeminiで作図)を図で示しています。

中国は今、西側諸国の産業や国民生活にとって「代替不可能」な特定の化学物質のシェアを独占しつつあります。

これは、かつて日本を震撼させた「レアアースショック」の再来、あるいはそれ以上の事態を招く可能性があります。

今回の記事では、中国が意図的に構築しているサプライチェーンのチョークポイント(戦略的要衝)」について、具体的な品目を挙げながら解説します。

1. 命を握る:医薬品原薬(API)の人質化

「中国が医薬品を止めるわけがない」と思われるかもしれません。しかし、データを見ると、世界はすでに中国なしでは薬を作れない状態にあります。

① ビタミンC(アスコルビン酸シェア90%超

ビタミンCは単なるサプリメントではありません。ハムやソーセージなどの食品保存料、そして家畜の飼料添加物として不可欠な化学物質です。中国は世界の生産量の90%以上を支配しています。もし供給が止まれば、世界の食品加工業は停止し、食肉供給にも影響が出ます。欧米の工場は、かつての中国によるダンピング攻勢でコスト競争に敗れ、ほとんどが閉鎖してしまいました。

抗生物質ペニシリン等)原料独占

さらに深刻なのが抗生物質です。ペニシリンなどの原料を作るための「発酵プロセス」は、汚染リスクが高くコストがかかるため、欧米諸国はこれを敬遠し、中国に丸投げしてきました。現在、最終的な錠剤にする工程はインドなどが行っていても、その出発原料(KSM)の大部分は中国頼みです。米国の議会諮問機関も「中国は米国人の命を危険に晒す能力を持っている」と警告しています。

2. 未来を握る:EV・電池材料の「グリーン・チョークポイント」

脱炭素社会の切り札である電気自動車(EV)。この分野でも、中国は「心臓部」の素材を握っています。下図はリチウムイオン電池の仕組みと材料(LFP等)を示していますが、オレンジ色の球がLFPで、オレンジ色のせんがPVDFです。

リチウムイオン電池の仕組みと材料(LFP等)の重要性

LFP(リン酸鉄リチウム)シェア99%超

テスラやBYDが採用を拡大している、安価で安全なバッテリー正極材です。コバルトなどの高価なレアメタルを使わないため、EV普及の鍵とされていますが、このLFPの生産はほぼ100%、中国が独占しています。西側の自動車メーカーがコストダウンのためにLFPを採用すればするほど、中国への依存度は高まる構造です。

② PVDF(ポリフッ化ビニリデン)シェア61%超

あまり聞き慣れない名前ですが、リチウムイオン電池を作るための「接着剤(バインダー)」として不可欠なフッ素樹脂です。EV需要の急増に伴い、中国はこの分野でも圧倒的な生産能力を構築し、価格支配力を強めています。

3. なぜ「チョークポイント」を作るのか?

なぜ中国は、これほど特定の分野に集中してシェアを握るのでしょうか?

その狙いは、西側諸国による「デカップリング(中国切り離し)」の無力化にあります。これは「相互依存の武器化」と呼ばれる戦略です。

  • 報復能力の確保 「もし米国が半導体やAI技術で中国を締め上げるなら、我々はビタミンと電池材料で世界を締め上げる」という脅し(抑止力)になります。
  • 代替不可の構築 利益度外視の低価格で供給し続けることで、日米欧の企業が新たに工場を建てる意欲(採算性)を奪います。これにより、独占状態が「固定化」されるのです。

結論:リスクを直視し、備える時

シリーズを通してお伝えしてきた通り、中国の化学産業の増産は、単なるビジネスではありません。

それは、「自国の生存(自給自足)」と「他国の生殺与奪(チョークポイント)」を同時に達成するための、巨大な国家プロジェクトです。

中国が描く世界規模の物流と影響圏の拡大 

私たち日本企業や消費者は、「安いから」という理由だけで調達先を選んでいた時代が終わり、「供給が止まらないか」という安全保障のコストを支払う時代に入ったことを自覚する必要があります。

本シリーズ「中国化学産業の戦略的過剰生産」

お読みいただきありがとうございました。この問題は、今後数年から10年にわたり、世界経済の主要テーマとなり続けるでしょう。