「ルンバ」は中国企業へ
iRobotが連邦破産法11条を申請
かつての絶対王者が迎えた終着点。
最大の製造委託先であるPICEA Group傘下で再建へ
ロボット掃除機といえば「ルンバ(Roomba)」。多くの人にとって、この名前はロボット掃除機の代名詞でした。しかし、その開発元であるiRobot社が直面していた経営危機は、ついに決定的な結末を迎えました。
2025年12月14日(米国東部時間)、iRobot社は関連会社を含めて「米連邦破産法第11条(Chapter 11)」の適用を申請しました。
再建の担い手となるのは、同社の最大の製造委託先であり債権者でもある中国PICEA Group(杉川机器人)です。なぜ、かつて市場を独占したパイオニアが法的整理に追い込まれたのか?その背景にある「3つの誤算」が、この結末を決定づけました。
誤算1:Amazonとの「破談」が生んだ空白の18ヶ月
iRobotの運命を狂わせた最大の要因は、Amazonによる買収計画の失敗です。2022年に約17億ドルで買収が発表されましたが、各国の規制当局による独占禁止法上の反対により、2024年1月に白紙撤回されました。
審査を待っていた約1年半の間、iRobotは「待ち」の姿勢に入ってしまいました。大胆な戦略転換を控えた結果、技術革新のスピードが止まり、ライバルたちに追い越される「空白の時間」を生んでしまったのです。
十分な資金を確保できず、結果としてキャッシュフローが枯渇する事態に陥りました。
誤算2:カメラ vs レーザーの技術戦争に敗北
iRobotが足踏みしている間に、RoborockやDreameといった中国メーカーは猛烈な勢いで進化しました。その決定的な差は「目」の技術です。
- iRobot (カメラ方式): 天井や家具を撮影して位置を把握。部屋が暗いと迷子になりやすい。
- 中国勢 (レーザー/Lidar方式): レーザーで距離を測定。真っ暗闇でも正確に動き、地図作成が一瞬で終わる。
消費者は「暗い部屋でも正確に動くレーザー(Lidar)」を選びました。さらに、中国勢が「モップ全自動洗浄ドック」を投入する中、かつての技術リーダーだったルンバは、いつの間にか「機能が少ないのに高い製品」になってしまったのです。
誤算3:コスト削減の代償。「製造委託先」に飲み込まれた皮肉
資金繰りが悪化したiRobotは、生き残るために製造体制を大きく変えました。これまでの自社設計体制から、中国のODM企業(設計から製造まで請け負う会社)への依存を強めました。
このODM戦略が、最終的にiRobotを法的整理へと導く要因の一つとなりました。皮肉にも、その最大の製造委託先であるPICEA Groupが、債権者として会社そのものを引き受けることになったのです。
これにより、iRobotは実質的に「中国企業の完全子会社」として、その巨大な製造基盤の一部に組み込まれることになります。
日本市場への影響は?
多くのユーザーが心配するのは「手元のルンバは使えるのか?」「サポートはどうなるのか?」という点です。iRobotの日本法人であるアイロボットジャパンの山田毅社長は、以下の通りコメントを発表しています。
全てのサービス、サポート、販売活動はこれまで通り継続しており、今回の発表にともなう日本のお客様への直接的な影響はございません。
よって製品保証、アプリ、修理・サポートなどのアフターサービスもこれまで通り提供されます。
当面の間、日本のユーザーへの影響は限定的のようです。「ルンバ」というブランド自体も存続します。
結論:iRobotの「第2章」が始まる
iRobotは上場廃止となり、独立したアメリカ企業としての歴史に幕を下ろしました。手続きは順調に進めば2026年2月までに完了する見通しです。
しかし、これは「消滅」ではありません。PICEA Groupの強力な資金力と製造能力をバックに、新生ルンバが巻き返しを図る可能性も十分にあります。今後の製品展開に、中国資本が入ったことによる変化(価格競争力の強化や、ライダー技術の採用など)が現れるのか、注目が集まります。