なぜNYTは東京を素通りしたのか?
2020年「メディア大移動」で見えた日本の不都合な真実
2020年、メディア業界を揺るがす大事件が起きました。中国政府が、ニューヨーク・タイムズ(NYT)やウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の敏腕記者たちを大量に国外追放したのです。この経緯は以下の記事をご覧ください。
欧米メディアは本当に「親中」か?北京特派員の過酷な現実と日本との決定的な違い - 月影
彼らは新たな拠点を求めてアジアを彷徨いました。世界第3位の経済大国であり、アメリカの同盟国である日本(東京)は、当然その筆頭候補になるはずでした。
しかし、結果は衝撃的でした。彼らが選んだのは、韓国のソウルと、台湾の台北だったのです。
なぜ東京は選ばれなかったのでしょうか?「中国への配慮があったから?」いいえ、違います。最新の報告書が暴き出したのは、日本自身の「構造的な自滅」でした。
1. 漁夫の利を得た「ソウル」と「台北」
東京が負けた理由を知る前に、なぜライバル都市が選ばれたのかを見てみましょう。
🇰🇷 ソウル:デジタルとKカルチャーの勝利
ニューヨーク・タイムズがデジタルニュース拠点を移したのはソウルでした。理由は明確です。
- 爆速のネット環境: デジタル報道に不可欠な通信インフラが世界最高水準。
- 柔軟なコロナ対策: 日本が鎖国する中、韓国はビジネス目的の入国を(厳しい管理付きで)認めていました。
- ニュースとしての価値: BTSや『パラサイト』、サムスンなど、世界が注目するコンテンツが豊富でした。
🇹🇼 台北:中国語の最前線
一方、現場の記者たちは台北に集まりました。
- 言語の壁がない: 中国語(マンダリン)環境に身を置けるため、中国本土のSNS監視や資料読解の能力が落ちません。
- 政府の熱烈歓迎: 台湾政府は手続きを簡素化し、「民主主義の砦」として記者を歓迎しました。
2. 東京が犯した「4つの自滅」
では、なぜ東京は選ばれなかったのか。報告書は、中国への政治的配慮ではなく、「日本の使いにくさ」が原因だと断定しています。
3. 英語も通じない「ガラパゴス」
さらに、生活面でのハードルも指摘されています。
世界的な英語能力ランキングで、日本はG7最下位。不動産契約から病院まで、日本語が必須の環境は、緊急で移住してくる記者家族にとって過酷です。ソウルも韓国語社会ですが、若年層の英語力や行政のデジタル化においては、東京よりはるかに「外国人フレンドリー」だったのです。
結論:これは「負けるべくして負けた」
東京が選ばれなかったのは、中国の圧力が強かったからではありません。
「変化を嫌う硬直性」「排他的なメディア慣行」「デジタル化の遅れ」という、日本社会が長年抱えてきた問題が、パンデミックという危機で露呈した結果なのです。
「東京回避(Tokyo Passing)」という現実は、私たちが思っている以上に、世界が日本を「扱いにくい国」と見ている証拠なのかもしれません。