第5回:【代詞②】質問のキホン「疑問代詞」
中国語文法学習の第5回、前回に引き続き「代詞」の解説です。今回は「代詞」ファミリーの中でも、質問に欠かせない「疑問代詞」を徹底的に学びます。
「誰?」「何?」「どこ?」「なぜ?」といった基本的な疑問詞から、日本人が混乱しやすい「怎么」と「为什么」の使い分け、さらには疑問文以外での意外な使い方まで、詳しく見ていきましょう!
疑問代詞とは?
「疑問代詞」とは、その名の通り「疑問」を表す代詞のことです。日本語の「誰、何、どこ、いつ、なぜ、どのように」といった、いわゆる5W1Hにあたる言葉たちです。
中国語の疑問文の最大のポイント:
日本語や英語と違い、中国語では疑問代詞を使っても語順は変わりません。
「答え」が来るはずの場所に、そのまま疑問代詞をポンと置くだけで疑問文が完成します。
- 肯定文:他是田中。()(彼は田中さんです。)
- 疑問文:他是谁?()(彼は誰ですか?)
※「田中」という答えが入る場所に、そのまま「谁 (だれ)」を入れています。
基本的な疑問代詞
まずは、人・モノ・場所を尋ねる最も基本的な疑問代詞からマスターしましょう。
“谁 (shuí)” と “什么 (shénme)”
- 谁( / ): 「だれ」(人を尋ねる)
※ と どちらの発音も使われます。
例:谁是老师?()(誰が先生ですか?)
例:你想找谁?()(あなたは誰を探していますか?) - 什么(): 「なに」(モノ・事を尋ねる)
例:这是什么?()(これは何ですか?)
例:你吃什么?()(あなたは何を食べますか?)
“哪 (nǎ)” と “哪个 (nǎge / něige)”
- 哪(): 「どの」(複数の選択肢から選ぶ)
哪 は、前回の指示代詞 这(zhè) や 那(nà) と同じように、単独ではあまり使われず、後ろに量詞や名詞を伴います。
例:哪本书?()(どの本ですか?)
例:你是哪国人?()(あなたはどの国の人ですか?=お国はどちらですか?) - 哪个( / ): 「どれ」
哪 + 量詞 个 がくっついた形で、単独で「モノ」を指せます。
例:哪个是你的?()(どれがあなたのですか?)
“哪里 (nǎli)” と “哪儿 (nǎr)”
どちらも 「どこ」 という場所を尋ねる疑問代詞です。意味は全く同じで、使い分けは地域によります。
- 哪里(): 書き言葉や、中国の南方でよく使われる。
- 哪儿(): 口語的で、特に中国の北方でよく使われる(児化)。
- 卫生间在哪里?()
- 卫生间在哪儿?()
(どちらも「お手洗いはどこですか?」という意味)
方法・理由・状態を尋ねる
“怎么 (zěnme)”, “怎样 (zěnyàng)”, “怎么样 (zěnmeyàng)”
これらはすべて「どう」と訳せますが、ニュアンスが異なります。
- 怎么(): 「どのように、どうやって」(方法・手段)
主に動詞の前に置いて、その動作の方法を尋ねます。
例:这个汉字怎么读?()(この漢字はどう読みますか?)
例:去车站怎么走?()(駅へはどうやって行きますか?) - 怎样(): 「どのように」(方法)、「どのような」(状態)
怎么 と似ていますが、より書き言葉的です。動詞の後ろに置くこともできます。
例:我们应该怎样解决这个问题?()(我々はこの問題をどのように解決すべきか?) - 怎么样(): 「(状態は)どうですか?」(評価・感想)
文末や単独で使い、相手の意見や物事の状態を尋ねます。非常に便利な表現です。
例:味道怎么样?()(味はどうですか?)
例:我们去看电影,怎么样?()(私たち映画を見に行きませんか、どうです?)
“怎么 (zěnme)” と “为什么 (wèishénme)” の違い
どちらも「なぜ、どうして」と理由を尋ねることができますが、ニュアンスが全く異なります。これは最重要ポイントです。
- 为什么(): 「なぜ」(理由・原因)
客観的な理由や原因をストレートに尋ねます。
例:你为什么学中文?()(あなたはなぜ中国語を勉強するのですか?)(理由が知りたい) - 怎么(): 「どうして、なんで」(意外・不満・非難)
予期しない事態や、常識に反する状況に対して「(いったい)どうして~なんだ?」と、驚きや不満の感情を込めて尋ねます。
例:你怎么哭了?()((泣くはずないのに)どうして泣いているの?)(驚き・心配)
例:你怎么还不回家?()((もう帰る時間なのに)なんでまだ帰らないの?)(不満)
純粋な理由を尋ねたい時に 怎么 を使うと、相手を非難しているように聞こえる場合があるので注意しましょう。
程度・数量を尋ねる
“多 (duō)” と “多么 (duōme)”
- 多(): 「どのくらい」(程度・数量)
主に形容詞の前に置いて、その程度を尋ねます。
例:你多大?()(どのくらい大きい?=おいくつですか?)
例:从这里到车站多远?()(ここから駅までどのくらい遠いですか?) - 多么(): 「なんと、なんて」(感嘆)
これは疑問詞ではなく、感嘆文で使われます。「なんと~なことか!」
例:这里的风景多么漂亮啊!()(ここの景色はなんて綺麗なんだろう!)
“几 (jǐ)” と “多少 (duōshao)” の違い
どちらも「いくつ、どのくらい」と数量を尋ねますが、使い分けがあります。
- 几(): 「いくつ」(数が少ないと予想、通常10以下)
後ろに量詞を伴うのが原則です。
例:你有几个孩子?()(お子さんは何人いますか?)(普通10人以下と予想)
例:现在几点?()(今何時ですか?) - 多少(): 「いくつ、どのくらい」(数が多いと予想、または10以上)
後ろの量詞は省略してもよいのが特徴です。
例:你们班有多少学生?()(あなたのクラスには何人学生がいますか?)(10人以上と予想)
例:这个多少钱?()(これはいくらですか?)(値段を尋ねる時は常に 多少)
疑問代詞の応用的な使い方
疑問代詞は、必ずしも疑問文だけで使われるわけではありません。非常に重要な応用用法を2つ紹介します。
疑問代詞の非疑問用法(不定・任意の指示)
疑問代詞が疑問文以外で使われると、「~か」「~でも」といった、不特定のものや全てを指す意味になります。
- 1. 不定のものを指す(「~か」)
例:我想吃点儿什么。()
訳:私は何か食べたいです。(「何を食べたいですか?」ではない)
例:好像有人在叫我。() ※この文では「谁」は使われにくいが、「谁在叫我?(誰かが私を呼んでいる?)」のように自問自答の形はあり得る。
例:你最好去哪儿休息一下。()
訳:あなたはどこかへ行って少し休んだほうがいい。
同一疑問代詞の呼応用法(任意の指示)
2つの疑問代詞を前後に呼応させると、「~(する人は)誰でも」「~(するものは)何でも」という、任意の対象すべてを指す強い表現になります。
- 谁想去,谁就去。()
訳:行きたい人は誰でも行ってください。 - 你喜欢哪个,就拿哪个。()
訳:好きなものをどれでも取ってください。 - 哪儿安静,我就在哪儿学习。()
訳:静かな所ならどこでも、私はそこで勉強します。 - 他想什么,就说什么。()
訳:彼は思ったことは何でも口にする。