【感想】「コウラン伝 始皇帝の母」はなぜ面白い?瓔珞チームが描く愛と野望の物語
イントロダクション:あの「瓔珞」のチームが再集結!
中国ドラマブームの火付け役となった「瓔珞<エイラク>~紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃~」。その制作陣(脚本家:爾笛、監督:李達超、東陽歡娛影視文化有限公司)と主要キャストが再びタッグを組んだと聞けば、期待せずにはいられません。今回ご紹介する「コウラン伝 始皇帝の母」は、まさにそのドリームチームが手がけた、もう一つの壮大な一代記です。
舞台は、中国史上初めて天下統一を成し遂げた始皇帝の時代。その母であり、歴史上多くの謎に包まれた女性・趙姫(ちょうき)をモデルにした主人公・李皓鑭(りこうらん)が、いかにして激動の春秋戦国時代を生き抜き、権力の頂点へと上り詰めたのか。知略、裏切り、そして二人の男との運命的な愛が交錯する、スリリングな物語が展開されます。この記事では、「瓔珞」ファンはもちろん、すべての中国ドラマファンを魅了する「コウラン伝」の奥深い魅力に迫ります。
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物語のあらすじ(ネタバレなし)
物語は春秋戦国時代の中国・趙(ちょう)国から始まります。名家の娘であった李皓鑭(りこうらん)は、継母の策略によってすべてを失い、奴隷として売り飛ばされるという絶望の淵に立たされます。そんな彼女を救い出したのは、野心あふれる大商人・呂不韋(りょふい)でした。
呂不韋は、皓鑭の美貌と聡明さ、そして逆境に屈しない強さを見抜き、彼女を「奇貨(きか)」(=掘り出し物)として自らの野望の駒にしようと考えます。二人は互いに利用し合う関係でありながら、次第に惹かれ合っていきます。
そんな中、二人が出会ったのが、趙国で人質として虐げられていた秦国の王孫・嬴異人(えいいじん)です。呂不韋は、異人を未来の秦王に据えるという壮大な計画を立て、皓鑭を異人に嫁がせます。やがて皓鑭は、のちの始皇帝となる息子・政(せい)を出産。皓鑭、呂不韋、異人——それぞれの愛と野望が絡み合い、三人の運命は秦国の統一という大きな歴史の渦へと飲み込まれていくのです。
主要キャスト:物語を彩る魅力的な登場人物たち
「瓔珞」でおなじみの顔ぶれが、全く異なる役柄で火花を散らす様子は必見です。
李皓鑭(り こうらん)役:呉謹言(ウー・ジンイェン)
本作の主人公。始皇帝の母となる女性。聡明でプライドが高く、どんな苦境にも屈しない強い意志の持ち主。「瓔珞」の魏瓔珞とはまた違う、情熱的で人間味あふれるヒロイン像を熱演しています。
呂不韋(りょ ふい)役:聶遠(ニエ・ユエン)
野心家の衛(えい)国の商人。皓鑭と異人を見出し、自らの知略と財力で歴史を動かそうとします。「瓔珞」の皇帝役とは一転、野心に燃えながらも皓鑭への愛に揺れ動く、複雑な男を演じます。
嬴異人(えい いじん)/子楚(しそ)役:茅子俊(マオ・ズージュン)
秦国の王孫。趙で人質として暮らしています。穏やかで優しい物腰の裏に、深い知略と大志を秘めています。皓鑭と呂不韋の間に立ち、物語の重要な鍵を握る人物です。
雅(が)王女 役:海鈴(ハイ・リン)
趙国の王女。異人に想いを寄せるあまり、皓鑭の前に立ちはだかる最大の恋敵の一人。「瓔珞」での心優しき侍女・明玉とは正反対の、プライドが高く嫉妬深い役柄で強烈な印象を残します。
厲(れい)王妃 役:寧静(ニン・ジン)
趙国の王妃。絶大な権力を持ち、宮廷を支配する女傑。その鋭い洞察力で、皓鑭たちの前に幾度となく立ちはだかります。圧倒的なカリスマと存在感を放つキャラクターです。
華陽(かよう)夫人 役:譚卓(タン・ジュオ)
異人の義母となる秦国の夫人。のちの華陽太后。「瓔珞」の高貴妃役とはまた違う、妖艶さと政治的手腕を併せ持つ女性を演じ、物語の後半で重要な役割を果たします。
公子蛟(こうしこう) 役:洪堯(ホン・ヤオ)
趙国の公子で、皓鑭の元婚約者。「瓔珞」で和親王を演じた彼が、本作では権力欲から皓鑭を裏切り、執拗に彼女を追い詰める悪役として登場します。
安国君(あんこくくん)/孝文王 役:王茂蕾(ワン・マオレイ)
秦国の王太子で、異人の父。多くの妻と子供を持ち、当初は異人の存在を軽視していますが、呂不韋の策略により彼を後継者として意識し始めます。「瓔珞」で強烈な印象を残した袁春望役の彼が、本作では気の多い王族を演じています。
殷小春(いん しょうしゅん) 役:姜梓新(ジャン・ズーシン)
皓鑭が逆境の中で出会う聡明な女医。のちに皓鑭の侍医となり、公私にわたる最大の友として彼女を支え続けます。「瓔珞」の明玉役でおなじみの彼女が、本作では冷静沈着で腕の立つプロフェッショナルな女性を演じています。
「コウラン伝」がこれほどまでに愛される理由
本作がただの二番煎じではなく、独自の魅力で多くのファンを獲得した理由は何でしょうか。
1. 再びの「瓔珞」!逆境ヒロインの痛快なサクセスストーリー
「瓔珞」ファンが最も期待するポイントは、やはり主人公・皓鑭の活躍でしょう。継母に陥れられ、婚約者に裏切られ、すべてを失った彼女が、持ち前の知恵と度胸、そして呂不韋の助力を得て、次々と襲いかかる陰謀を打ち破っていく姿は痛快そのもの。一筋縄ではいかない敵に対し、どう立ち向かっていくのか、そのスリリングな展開から目が離せません。
2. 愛か、野望か。切ない三角関係の行方
本作の大きな軸となるのが、皓鑭、呂不韋、異人の三人の関係です。共に死線をくぐり抜けてきた同志であり、恋人でもある呂不韋。政略結婚の相手でありながら、皓鑭を深く愛し、心の支えとなる異人。皓鑭は二人の間で揺れ動き、また二人の男も、皓鑭への愛と自らの野望との間で葛藤します。この切なくもスリリングな三角関係が、重厚な歴史ドラマに華と深みを与えています。
3. 豪華絢爛な衣装と美術セットの映像美
「瓔珞」で視聴者の目を奪った、彩度を抑えた上品な色調と、細部までこだわり抜いた美術は本作でも健在です。春秋戦国時代の華やかながらも力強い衣装の数々、壮麗な宮殿のセットは、観ているだけでその世界観に引き込まれます。特に趙国と秦国で異なる文化や装飾の違いを見比べるのも楽しみの一つです。
4. 「始皇帝の母」という大胆な歴史解釈
本作の主人公のモデルである趙姫は、歴史書「史記」において、呂不韋の愛人であったとも、のちに嫪毐(ろうあい)と密通したとも記される、スキャンダラスな人物です。本作は、そんな彼女を「自らの意志で運命を切り開いた強い女性」として大胆に再解釈しています。史実の隙間を埋めるようなフィクションの力で、悪女とも聖女ともつかない、人間味あふれる「始皇帝の母」の物語を描き切った点に、本作の最大の魅力があります。
まとめ
「コウラン伝 始皇帝の母」は、「瓔珞」の痛快なカタルシスを引き継ぎつつ、よりスケールの大きな歴史ロマンと、複雑な大人の恋愛模様を描いた重厚な作品です。一人の女性が、愛と野望の狭間でいかにして時代を動かし、歴史に名を残す「母」となったのか。
呉謹言と聶遠の「瓔珞」コンビが見せる、皇帝と妃ではない、新たな関係性も見どころです。激動の時代を駆け抜けた皓鑭の生涯を、ぜひその目で見届けてください。「瓔珞」が好きだった方なら、間違いなく夢中になれる傑作です。