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わかる中国語文法⑫:中国語の3大構文!「把構文」「受け身(被)」「比較(比)」

 

わかる中国語文法⑫:中国語の3大構文!「把構文」「受け身(被)」「比較(比)」

こんにちは!中国語文法シリーズの第12回です。

中国語の基本的な文型(SVO、連動文、兼語文)を学んできた皆さん、お疲れ様です。今回はいよいよ、中級へのステップアップに欠かせない、中国語独自の「3大特殊構文」を集中特訓します。

それは、 (bǎ)」 (bèi)」 (bǐ)」の3つの介詞を使った構文です。「〜を〜する(処置)」「〜に〜される(受け身)」「〜より〜だ(比較)」という、非常に重要でよく使う表現です。最初は少し難しく感じるかもしれませんが、ルールさえ掴めば最強の武器になります!


「~を」どうする?:“把”構文(処置文)

()」構文は、日本語の「〜を」と似ていますが、使い方が全く違います。これは、目的語(モノ)を「どう処理したか」「どう扱ったか」という「処置」の結果を強調する構文です。

通常の「SVO」の語順(例:我吃了苹果 - 私はリンゴを食べた)と違い、目的語を動詞の前に持ってきます。

基本構造: S + + O (目的語) + V (動詞) + その他の成分 (結果・方向など)

ポイント:
1. 目的語(O)は、「そのリンゴ」「私の宿題」のように特定のものである必要があります。
2. 動詞(V)は単独では使えず、必ず後ろに「(le)」や結果補語((wán)など)といった「結果」を表す成分が必要です。

  • 苹果( píngguǒ chī le.) - 私はリンゴを食べてしまった。(リンゴを処理した結果)
  • 请你(Qǐng nǐ mén kāi.) - ドアを開けてください。(ドアを開けるという処置)
  • 作业( zuòyè zuò wán le.) - 彼は宿題をやり終えた
  • NG (X): 我把苹果吃。(動詞の後ろに何もないため、間違い)
我把苹果吃了。我吃了苹果。この使い分けはここをクリックして。

これは中国語の文法における非常に重要で、多くの学習者がつまずきやすいポイントです。この2つの文の違いは、話の焦点(何を一番伝えたいか)にあります。

簡単に言うと、以下のようになります。

1. 我吃了苹果。 (Wǒ chīle píngguǒ.)

焦点: 「食べた」という動作、または「何を食べたか」という事実。

ニュアンス: 「私はリンゴを食べた。(他のものではなく)」

文型: SVO(主語 - 動詞 - 目的語)

説明: 最も基本的な文型で、「私が『食べる』という行為をした」こと、または「食べたものが『リンゴ』である」という事実を客観的に述べています。

2. 我把苹果吃了。 (Wǒ bǎ píngguǒ chīle.)

焦点: 「リンゴ」がどうなったか(=食べられて、なくなった)。

ニュアンス: 「私は(その)リンゴを食べてしまった。(その結果、リンゴはもうない)」

文型: 把構文(主語 + 把 + 目的語 + 動詞 + 結果)

説明: これは「把構文」と呼ばれる特別な文型です。「把」を使って目的語(リンゴ)を動詞(食べる)の前に出し、その目的語に対して**「ある処置(食べる)を加えた結果、どうなったか」**を強調します。この文では、「リンゴ」が「食べられる」という処置によって「なくなった」という結果に焦点が当たっています。

使い分けの具体的な例

例1:何を食べたか聞かれた場合

A: 你昨天晚饭吃了什么? (昨日、夕飯何食べた?) B: 我吃了苹果。 (リンゴ食べたよ。)

解説: この場合、Aさんが知りたいのは「何を食べたか」という事実です。したがって、客観的な事実を述べる「我吃了苹果。」が適切です。 ここで「我把苹果吃了。」と答えると、「(あなたが知ってる)あのリンゴを食べちゃったよ」という意味になり、Aさんが特定のリンゴの存在を知らない限り、少し不自然に聞こえます。

例2:特定のリンゴの行方を聞かれた場合

A: 桌上(zhuō shàng)的苹果呢? (テーブルの上にあったリンゴは?) B: 我把苹果吃了。 (私があのリンゴ、食べちゃった。)

解説: この場合、Aさんは「(テーブルの上にあった)特定のリンゴ」がどうなったかを知りたがっています。Bさんは「そのリンゴは、私が食べた結果、もうありません」と、リンゴの処置と結果を伝えています。 この状況で「我吃了苹果。」と言っても間違いではありませんが、「把構文」を使った方が「ああ、あのリンゴはあなたが食べたのね」というニュアンスが明確に伝わります。

「把構文」のポイント

「我把苹果吃了。」のような「把構文」には、いくつかのルールがあります。

1.目的語(リンゴ)は特定のモノである: 「把」の後ろに来る目的語は、話し手と聞き手の間で「ああ、あれね」とわかる特定のモノや人を指すことが多いです。(例:そのリンゴ、私のカバン、あの本)

2. 動詞(食べる)の後ろに「結果」が必要: 「把構文」は処置と結果を述べる文なので、動詞の後ろに動作の完了を示す「了」や、他の結果を示す言葉(例:吃完 (食べ終わる), 吃掉 (食べてしまう))が必要です。

まとめ

我吃了苹果。「(私は)リンゴを食べた」という事実を言いたい時。

我把苹果吃了。 「(私は)そのリンゴを(食べてしまった)」と、リンゴがどうなったかという結果を言いたい時。


「~に~される」:受け身構文(“被”など)

(bèi)」構文は、主語が「〜によって〜された」という「受け身(受動)」を表します。多くの場合、主語にとって望ましくない(被害を被る)出来事に使われます。

077 介詞「被」などを用いる受け身文

」の他に、話し言葉では「(jiào)」や「(ràng)」も同じ意味で使われます。

基本構造: S (受け手) + (+ O (動作主)) + V (動詞) + その他の成分

ポイント:」構文と同様、動詞の後ろには「」や補語などが必要です。

  • 苹果(Píngguǒ bèi chī le.) - リンゴは彼に食べられてしまった
  • 我的钱包(Wǒ de qiánbāo bèi tōu le.) - 私の財布が盗まれた。(動作主「誰に」は省略可能)
  • 杯子打碎(Bēizi jiào māo dǎ suì le.) - コップが猫に割られてしまった。(を使った話し言葉

介詞「被」などを用いない受け身文

文脈から明らかな場合、「」を使わなくても受け身の意味になることがあります。「〜は(もう)〜された」というニュアンスです。

  • 作业做完了(Zuòyè zuò wán le.) - 宿題は終わった。(終わらせられた)
  • 吃光了(Fàn chī guāng le.) - ご飯はすっかり食べられた。

「~より~だ」:比較構文(“比”など)

()」構文は、2つのものを比べて「AはBより〜だ」という「比較」を表す、非常に重要な構文です。

 介詞「比」を用いる比較文

基本的な比較文の形です。語順が日本語と全く違うので注意しましょう。

基本構造: A + + B + 形容詞 (+ 具体的な差)

最重要ルール: 形容詞の前に「(hěn)」などの程度副詞は**絶対に**入れません!

  • ( gāo.) - 彼は私より背が高い。
  • NG (X): 他比我很高
  • 苹果西瓜便宜(Píngguǒ xīguā piányi.) - リンゴはスイカより安い。
  • (具体的な差): 他比我一点儿(Tā bǐ wǒ gāo yìdiǎnr.) - 彼は私より少し背が高い。
  • (否定形): 没有他高。(méiyǒu tā gāo.) - 私は彼ほど背が高くない。(「不比」も使うが、まず「没有」を覚えましょう)

介詞「比」を用いない比較文

」を使わずに比較や同等を表現する方法もあります。

  • 同等: A B 一样 (+ 形容詞)
    一样高。(gēnyíyàng gāo.) - 彼は私と同じくらい背が高い。
  • 同等(否定): A B 不一样 (+ 形容詞)
    不一样高。(gēnbù yíyàng gāo.) - 彼は私と背が違う。
  • 差がある: A 不如 B (+ 形容詞)
    不如他(高)。(bùrú tā (gāo).) - 私は彼に(高さで)及ばない。=彼の方が高い。

まとめと次回予告

お疲れ様でした!中国語の3大構文、いかがでしたか?

  • (bǎ)構文: S + + O + V + (結果)。「〜を」処理する。
  • (bèi)構文: S + + (O) + V + (結果)。「〜に」〜される。
  • (bǐ)構文: A + + B + 形容詞。「AはBより〜だ」。は不要。

これらの構文は、SVOという基本語順を意図的に崩すことで、特定のニュアンスを強調する働きがあります。使いこなせれば一気に中国語らしさが増しますので、何度も音読して形ごと覚えてしまいましょう。

さて、今回までの学習で、中国語の「文型」はほぼ網羅しました。しかし、中国語にはもう一つ、学習者が最後にして最大の壁にぶつかる分野が残っています。それが「補語」です。

次回、【第13回】最難関「補語」① "結果・方向・可能"補語を徹底攻略 で、いよいよ中国語文法のラスボスに挑みます!お楽しみに。

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