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日々の雑感

鈴木農水大臣の農業政策。米価と自給率はどうなるか?

【速報版】鈴木新農水大臣が就任会見で語ったこと。「猫の目農政」の脱却と、私たちの「米価」「自給率」の行方

10月22日、自民党鈴木憲和氏が新しい農林水産大臣に就任しました。43歳での初入閣となります。

「農業のことはよくわからないけど、お米の値段は気になる…」

「新しい大臣になって、何が変わるの?」

就任会見では、彼の政治家としての「原点」や、農業政策、そして私たちの生活に直結する「米価」について、具体的なビジョンが語られました。

最新の会見内容に基づき、鈴木新大臣が何を目指し、それによって私たちの「米価」や「食料自給率」はどうなっていくのか、ポイントを分かりやすく解説します。

鈴木大臣は、農水省の元エリート官僚で農水省の政策をよく知っています。一方で、選挙区は米どころの山形県であり、稲作農家の利益を重視している。これだけを見ると、政策は、小泉さんが農水相をする前のJAの意向に沿った農政に戻りそうです。

鈴木大臣の「原点」:「猫の目農政」との決別

鈴木大臣は、会見で「農は国の本(もと)なり」という言葉を胸に刻むと述べました。彼の政策の根底には、20年前に農水省に入省したての頃、福島県の農家・須田さんに言われた強烈な一言があると言います。

日本の農政はコロコロ変わる。猫の目農政だ。

生産者は農林水産省と逆のことをやると蔵が建つと、この辺では言うんだよ

この言葉が「政治を志す原点」になったと語る鈴木大臣。彼が目指すのは、生産現場から見て「先の見える農政」の実現です。米作りは年に1回しかできません。だからこそ、方針がコロコロ変わる「猫の目農政」と決別し、安定した政策を打ち出すことが彼の最大のミッションとなります。

新農政の戦略:「守るべき分野」と「攻めるべき分野」

鈴木大臣は、戦略を明確に「守り」と「攻め」に分ける方針を示しました。

1. 【守り】中山間地域でも「稼いで暮らせる」農政

全耕地面積の約4割を占める中山間地域や条件不利な地域。こうした場所であっても、農業でしっかりと「稼いで暮らしていける」農政を展開し、国内の生産基盤を守り抜くと明言しました。

2. 【攻め】輸出拡大で「稼ぐ力」を

同時に、日本の「稼ぐ力」を高める「攻め」の分野も明確にしました。
特に「日本の米は品質という点で海外マーケットでのチャンスがある」と述べ、自身の海外経験から「アメリカでは当たり前のようにおにigiriが食べられ、刺身を乗せた丼もスーパーで売られている」と具体例を提示。

高市総理からも「2030年に輸出を5兆円にする(現状1.5兆円)」という強力な指示を受けており、輸出拡大を「攻め」の柱に据えることは間違いありません。

一番知りたい! 私たちの「米価」はどうなる?

さて、消費者として最も気になる「米価」の行方です。
この点について、大臣の会見から重要なポイントが見えてきました。

1. 価格は「マーケットが決める」のが大原則

まず鈴木大臣は「私の立場で、価格が高いとか安いとかは言わない。価格はマーケットの中で決まるべきもの」と断言しました。
ただし、現状で価格を高いと感じて購入できない国民がいることには理解を示しています。

2. 最大の焦点「備蓄米」:副大臣時代の「反省」

注目すべきは「備蓄米」への言及です。
大臣は生産者寄りで備蓄米の放出に消極的ではないかという見方がありましたが、今回の会見では異なる姿勢が鮮明になりました。

大臣は、備蓄米は「米価のコントロールのためではない」としつつ、過去(副大臣時代)に備蓄米放出の対応が遅れたことを「強く悔いる」と発言。

「マーケットからのシグナルを受け取る感覚が正直鈍くて、機動的な備蓄の放出ができなかった。こういう事態はもう二度としない

これは非常に重要な発言です。彼は、生産者保護のために備蓄米を出し惜しむのではなく、「需要を見誤る」ことで供給不足になる事態を金輪際起こさない、と誓いました。

3. 米価の行方:結論

この発言から、鈴木農政は「市場のシグナル」を最重要視すると分かります。
つまり、不作や需要の読み違えで米が不足し、価格が異常高騰する事態は、機動的な備蓄米放出で断固として避けるという強い意志が示されました。

ただし、これは「米価を積極的に下げる」こととも違います。
あくまで「需要に応じた生産」が原理原則。この原則のもとで、米価は市場によって決まります。短期的には「お米券やお米クーポン」といった対策も選択肢にはあるようです。

「米価が積極的に引き下げられる可能性は低い」という見立ては変わりませんが、「供給不足による異常な高騰は、政府が機動的に介入してでも止める」という、消費者にとっての安心材料が示された形です。

もう一つの疑問:「食料自給率」は上がる?

会見で大臣は、「攻め」と「守り」の戦略の結果として、「食料自給率の向上、食料安全保障の確保、これに繋げていきたい」と明確に述べました。

以前の分析では、

  • 「攻め」(輸出=生産拡大)
  • 「守り」(国内価格維持=生産調整)

という矛盾があり、自給率の行方は不透明だと解説しました。

今回の会見で、このジレンマに対する大臣の答えが見えてきました。
それは、「需要に応じた生産」を原則とし、それでも余る(あるいは戦略的に増産する)分は、国内価格に影響を与えないよう「海外マーケットへの輸出(攻め)」に振り向ける、という戦略です。

この「輸出」が成功すれば、国内の生産基盤を維持・拡大しつつ、結果として食料自給率の向上に繋がる、という青写真を描いています。

まとめ:「猫の目」から「先の見える」農政へ

鈴木新大臣の就任は、「現状維持」ではありません。
彼が原点とする「猫の目農政」のトラウマを払拭し、生産者にとっても消費者にとっても「先の見える」安定した農政を目指す、という強い意志が感じられる会見でした。

高市総理から指示された「完全閉鎖型植物工場」や「陸上養殖」といった新技術の推進も「攻め」の戦略に含まれます。

「守るべき」中山間地域を守りつつ、「攻めるべき」輸出や新技術で稼ぐ。そして、市場のシグナルを敏感に察知し、米の供給不安を二度と起こさない。
彼の舵取りが、日本の農業、そして私たちの食卓の未来を大きく左右することになりそうです。