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日々の雑感

ファミマ好調、セブン停滞の理由とは? 4つの戦略を徹底比較分析

 

王者セブンが「独り負け」? なぜ今、ファミマが絶好調なのか。そのウラ側を徹底比較!

「コンビニの王様」と言えば、誰もがセブン‐イレブンを思い浮かべるでしょう。その牙城は揺Rるがないように見えました。

しかし、最近「あれ? なんだかファミマ、元気じゃない?」と感じることはありませんか?
話題になる新商品、次々と当たるキャンペーン。「セブンは安定・高品質だけど、ファミマはなんだか面白そう」。

その感覚、実は正解です。
詳細な分析レポートを読み解くと、今、日本のコンビニ市場で「セブン‐イレブンが国内で苦戦し、ファミリーマートが絶好調」という、驚くべき逆転現象が起きていることが分かりました。

なぜこんなことが起きているのか? 両者を徹底的に比較しながら、その秘密に迫ります。


1. セブンの「絶好調」は本当? 国内と海外の"大きなギャップ"

まず、両社の「成績表」を見てみましょう。

セブン‐イレブンの親会社(セブン&アイ)の決算は、一見すると「絶好調」です。利益も大幅に伸びています。
しかし、これには"カラクリ"があります。

実は、この好調はアメリカなど「海外の」コンビニ事業が爆発的に伸びているおかげ。その一方で、肝心の「日本国内の」セブン‐イレブン事業は、なんと減収減益。つまり、売上も利益も減っているのです。

アナリストからは「セブン独り負け」とまで言われる始末。
一番深刻なのは、お店に来るお客さんの数(客数)が減り続けていることです。

一方で、ファミリーマートはどうでしょう。
なんと49ヶ月連続で既存店の売上が前年を上回るという、とんでもない記録を更新中。国内事業の利益も約19%増と、絶好調です。

【第1ラウンドの結論】

グローバル企業としてはセブンも強い。しかし、「日本のコンビニ対決」という土俵では、今、明らかにファミリーマートが勢いに乗っています。


2. 商品対決:「最強ブランド」のセブン vs 「話題づくり」のファミマ

なぜ、こんなに差がついたのでしょうか。カギは「商品」にあります。

セブン:「セブンプレミアム」という最強の"王様"

セブンの強みは、なんといってもプライベートブランド(PB)の「セブンプレミアム」。
「金のハンバーグ」に代表される高品質な商品は、年間1.5兆円も売れるお化けブランドです。
グループ全体(スーパーのイトーヨーカドーなど)で売るため、規模も品質も圧倒的。「セブンで買えば間違いない」という絶対的な信頼感が強みです。

ファミマ:「ファミマル」という"挑戦者"

対するファミマは、規模では勝負しません。その代わり、マーケティング(話題づくり)」で勝負を挑みました。

「負けていたのは、イメージでした。」
「そろそろ、No. 1を入れ替えよう」

こんな挑発的なキャッチコピーで、「品質もセブンに負けてないぞ!」と宣言。
そして、ただモノを売るのではなく、「行く理由」を作ったのです。

  • コンビニエンスウェア:
    「コンビニで靴下?」と誰もが思ったこの戦略が大ヒット。上期の売上は1.5倍に。「あの色の靴下が欲しいからファミマに行く」という、目的買いを生み出しました。
  • 「たぶん40%増量作戦」:
    単なるお買い得キャンペーンではなく、SNSで「本当に多い!」「これは詐欺(笑)」とバイラル(口コミ)を発生させる「お祭り(イベント)」にしました。セブンも似たキャンペーンで追随しましたが、「しょぼい」と酷評され、ファミマの巧みさが際立ちました。

【第2ラウンドの結論】

ブランドの「格」や「売上規模」では、いまだにセブンが王様です。
しかし、「今、お客さんの心を掴み、お店に足を運ばせている」のは、話題づくりが抜群にうまいファミリーマートだと言えます。


3. スピードの秘密:「ガッチリ管理」のセブン vs 「身軽」なファミマ

ファミマは、なぜこんなに次々とヒット企画を出せるのでしょうか?
その秘密は、商品の「作り方(製造モデル)」にありました。

セブン:「専用工場」モデル

セブンのお弁当やおにぎりは、「セブンのためだけ」に作られる「専用工場」で作られています。
セブンが開発から製造までガッチリと管理し、日本ハムなどのパートナー企業と二人三脚で進める。
これが、あの高い品質を全国どこでも同じように提供できる秘密です。
しかし、このシステムは「重く、硬直的」です。新しいことを始めたり、急なトレンドに対応したりするのが苦手という弱点があります。

ファミマ:「ファブレス(工場を持たない)」モデル

一方のファミマは、自社で工場を持ちません。
「このデザートは、あの専門メーカーに」「このパンは、こっちの技術がある会社に」というように、外部の多様なパートナーと柔軟に手を組むファブレス」というスタイルです。

この「身軽さ(アセットライト)」こそが、ファミマの最大の武器です。

流行の兆しが見えたら、すぐに得意なメーカーと組んで商品を開発できる。
「40%増量作戦」のようなヒット企画が生まれたら、すぐに生産体制を増強できる。

【第3ラウンドの結論】

セブンの「管理型」モデルは、過去の成功を築いた高品質の源泉です。
しかし、「今の」トレンドが激しく移り変わる市場では、ファミマの「ファブレス」モデルが持つスピードと柔軟性(機敏性)が、圧倒的な強みとなっています。


4. ポイント戦略対決:「みんな」のファミマ vs 「自分だけ」のセブン

そして、両者の明暗を分ける「第4の戦い」が、ポイント戦略です。

なぜファミマは楽天ポイントが使えて、セブンは使えないのか? この違いが、売上に決定的な差を生み出していました。

数字を見ると衝撃的です。 セブンは、お客さんの数(客数)が97.8%と、前年より減っています。 一方ファミマは、お客さん一人当たりの使う金額(客単価)が104.8%と、爆発的に増えています。 この違いこそ、ポイント戦略の「差」なのです。

セブン:「排他」戦略。データと利益を守る"クローズド"な城

セブンはなぜ楽天ポイントを導入しないのか? 理由は2つあります。

  1. データを渡したくない: 楽天は金融も小売も行う巨大なライバル。その楽天に「誰がいつ何を買ったか」という超重要な顧客データを渡したくありません。
  2. 利益を守りたい: 共通ポイントを導入すると、お店は楽天などに「手数料」を払う必要があります。セブンはそれを嫌い、手数料ゼロの自社ポイント(nanaco)で利益を守っています。

この戦略で、セブンは「自社のデータ」と「高い利益率」を守ることに成功しました。その代償として、楽天ポイントを使いたい多くの「お客さん」を店から遠ざけてしまった(客数97.8%)のです。

ファミマ:「開放」戦略。ポイントで集客し、アプリで刈り取る"オープン"な広場

ファミマの戦略は、セブンの真逆です。非常にクレバーな2段階戦略をとっています。

  1. (1) 集客フック(共通ポイント): まず、楽天ポイントやdポイントなど「共通ポイント」を誰でも使えるように門戸を開放。「ポイントが貯まるから」という理由で、楽天ユーザーなど「ポイント移民」をごっそり集客します。
  2. (2) 利益の最大化(FamiPay): そうやって集めたお客さんに、自社アプリ「FamiPay」(2600万DL!)を使わせ、お得なクーポンを連発します。お客さんは「クーポンがあるから、ついでにこれも買おう」となり、結果として客単価が104.8%と爆発的に伸びたのです。

共通ポイントで「集客」し、自社アプリで「客単価」を上げる。この見事な連携プレーが、ファミマの快進撃を支えています。

【第4ラウンドの結論】

セブンは、短期的な売上(客数)を犠牲にしてでも、「長期的なデータ支配と利益率」を守る防衛戦をしています。
ファミマは、手数料を払ってでも、「今すぐの売上とシェア」を獲りにいく攻撃的な戦いを仕掛け、それが大成功しています。


結論:なぜ今、ファミマはセブンを上回る勢いがあるのか?

セブン‐イレブンが、いまだに巨大な「王様」であることは間違いありません。
しかし、「日本国内」というリングの上では、今、明らかに挑戦者ファミマが優勢です。

その理由は、

  1. 機敏なマーケティング 「コンビニエンスウェア」や「増量作戦」など、お客さんが店に来る「理由」を作るのが抜群にうまい。
  2. 柔軟な製造体制:ファブレス」という身軽な体制が、そのヒット戦略を「スピード」で支えている。
  3. 開放的なポイント戦略: 楽天など「共通ポイント」で幅広く集客し、自社アプリ「FamiPay」のクーポンで客単価を最大化させている。

結果として、セブンが「データと利益」を守るために失っているお客さんを、ファミマがこの「マーケティング」「製造」「ポイント」という三位一体の戦略で、見事に掴み取っているのです。

日本のコンビニ戦争は、今、最高に面白い局面を迎えています。

「本記事は、情報提供を目的としたものであり、特定の企業の株式購入や投資を推奨するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。」