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ノーベル賞の発見!坂口志文博士のTregが自己免疫とがん治療を変える未来

💥自己免疫の謎を解き明かした細胞!ノーベル賞級の発見、制御性T細胞(Treg)が拓く未来の医療

著者:AIアシスタント | 公開日:2025年10月8日を想定

2025年にノーベル生理学・医学賞を受賞した坂口志文博士の発見は、免疫学の常識を覆しました。

【速報】坂口志文先生 ノーベル生理学・医学賞受賞決定!!! - 大阪大学

🛡️ 免疫システムの「ブレーキ役」:Tregとは何か?

私たちの体には、外部からの敵(病原体)と戦う「免疫システム」があります。このシステムは強力すぎて、もし誤って自分の体を攻撃し始めたら大変なことになります。これが自己免疫疾患(リウマチ、I型糖尿病など)です。

長らく免疫学の世界では、自分の体を攻撃しない「自己寛容」は、攻撃的なT細胞が胸腺で受動的に取り除かれることで成立すると考えられていました。しかし、これは半分しか正しくありませんでした。T細胞は、血液中にある白血球の一種で、その中には多くの種類があります。今回の記事は、T細胞の一種(制御性T細胞、Treg)についてです。

この常識を覆したのが、坂口志文博士の画期的な発見です。博士は、免疫応答を積極的に抑制する特殊なT細胞の集団が存在することを証明しました。それが制御性T細胞(Treg)です。

Tregは、健康な人のCD4+T細胞の約5%を占める「能動的なブレーキ役」です。この細胞が、免疫が暴走するのを防ぎ、私たちの体内で免疫のバランス(免疫恒常性)を保っているのです。坂口博士が2025年にノーベル生理学・医学賞を受賞したことで、この発見の医学的ブレイクスルーとしての地位が確固たるものとなりました。


🔬 発見の決め手!「Foxp3」というマスターキー

Tregの発見は、1980年代~90年代にかけて行われました。健常なマウスから特定のT細胞集団(CD4+CD25+ T細胞)を取り除くと、全身性の重篤な自己免疫疾患が発症した—この決定的な実験が、Tregの存在を証明しました。

そして2003年頃、Treg研究を飛躍的に加速させた「マスター制御因子」が特定されます。それがFoxp3という転写因子です。

  • Foxp3の重要性: Foxp3はTregの機能と分化を制御する司令塔です。ヒトでFoxp3に変異があると、IPEX症候群という重篤な免疫疾患を引き起こすことから、その機能の重要性は明らかです。

Foxp3の発見により、Tregを正確に特定・追跡することが可能になり、研究は一気に進みました。これにより、自己免疫疾患は単なる「過剰な免疫」ではなく、「制御機能の欠損」として捉えられるようになったのです。


🧠 「細胞の記憶」がカギ!iTregの安定性問題

Tregは素晴らしい「治療の種」ですが、臨床応用には大きな壁がありました。自己免疫疾患の治療では、体外でTregを増やして患者さんに戻すTreg導入療法が試みられています。しかし、体外で人工的に誘導したTreg(iTreg)は、体内の炎症環境にさらされると、抑制機能を失って炎症性の細胞に逆戻りしてしまう「可塑性」が問題でした。

この安定性のカギを握っていたのが、遺伝子の「記憶」を司るエピジェネティック制御です。後の研究で、Tregの安定性は、Foxp3遺伝子の発現を調節する部分にあるTSDR(Treg特異的脱メチル化領域)のDNA脱メチル化状態によって保障されていることがわかりました。脱メチル化されていると、Foxp3のタンパク質量が安定して十分あるが、メチル化されるとFoxp3タンパク質の量が減ってTregでなくなってしまいます。

この脱メチル化状態こそが、Tregが抑制機能を維持するための「細胞の記憶」として機能するのです。この発見により、DNA脱メチル化酵素(Tet2/3など)を制御することで、より機能が安定したTregを人工的に作り出す技術開発が進んでいます。これは、細胞治療における品質と安全性を担保するための決定的な知見となりました。


⚖️ Tregの二つの顔:自己免疫での「善」と、がんでの「悪」

Tregは、自己免疫疾患から私たちを守る「善玉」ですが、がん治療においては「悪玉」となります。がん細胞は、Tregの強力な免疫抑制能力を巧妙に利用します。

  • がんの守護神: 多くの固形がんでは、腫瘍微小環境(TME)でTregが異常に増殖し、免疫細胞によるがんへの攻撃を積極的に妨害しています。これは、がん免疫療法の効果を弱める主要因です。

この二面性こそが、Treg研究の面白さであり、治療戦略を二極化させています。

  1. 自己免疫疾患: 不足しているTregを増強・補充する(Treg導入療法)。
  2. がん治療: 腫瘍局所のTregの機能を特異的に抑制する。

特にがん治療では、全身のTregを除去すると自己免疫疾患のリスクがあるため、がん組織だけで特異的に働く分子(例:BATF)を標的とする、より精密な戦略が研究されています。


🚀 Tregが切り開く精密医療(Precision Medicine)の未来

坂口博士の発見から始まったTreg研究は、今や基礎免疫学の領域を超え、細胞治療の最前線へと進化しています。

今後の目標は、Tregの数を制御するだけでなく、その「機能的プログラム」を精密に制御することです。特定の疾患部位にTregを効率的に誘導する技術や、患者さん一人ひとりの病態に合わせたTregの増強/抑制を可能にするパーソナライズドな免疫療法の実現が最終的な目標です。

自己免疫疾患、がん、さらには移植拒絶反応など、幅広い分野でTreg制御技術が医学の未来を形作っていくことは間違いありません。坂口博士の発見が、難病に苦しむ多くの人々に希望をもたらすでしょう。