「印刷」の名を捨てた巨人。
AIと技術で未来を創るTOPPANの正体
「印刷会社」と聞くと、どんなイメージを持ちますか? 「紙の需要が減って、大変そうな業界…」と思う方も少なくないかもしれません。しかし、その常識を覆し、売上1.6兆円を超える巨大テクノロジー企業へと変貌を遂げたのが、旧・凸版印刷、現在の「TOPPANホールディングス」です。世界でもトップレベルの会社です。
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2023年、同社は創業123年で初めて社名から「印刷」の2文字を外しました。これは単なるイメージ戦略ではありません。彼らがもはや「印刷会社」という枠に収まらない、AIと最先端技術で未来の産業を創る巨人であることを示す、力強い宣言なのです。
今回は、私たちの生活のあらゆる場面を支えるTOPPANの「本当の姿」と、その圧倒的な強さの秘密に迫ります。
TOPPANの「今」:もはや印刷会社ではない
TOPPANの現在の姿を理解する鍵は、その事業内容にあります。彼らの売上は、大きく3つのセグメントから成り立っています。
- 生活・産業分野 (売上の約32%): 食品の鮮度を保つ高機能な包装フィルムや、本物のような木目を持つ家具・建物の内装材(化粧シート)など。
- エレクトロニクス分野: スマートフォンの有機ELディスプレイや、半導体の製造に不可欠な超精密部品(フォトマスク)など。
- 情報コミュニケーション分野: ICカードや偽造防止ホログラムなどのセキュア技術から、電子チラシサイト「Shufoo!」のようなデジタルマーケティングまで。
私たちがイメージする「紙にインクを刷る」事業は、もはや彼らのビジネスのほんの一部に過ぎません。特にエレクトロニクスや建装材、パッケージといった分野が収益の大きな柱となっており、TOPPANは「印刷」を祖業としながらも、全く異なるハイテク産業の集合体へと進化を遂げているのです。
成功の秘密①:「印刷テクノロジー」という万能エンジン
では、なぜTOPPANはここまで巨大化できたのか?その答えの一つは、彼らの戦略の核である「印刷テクノロジー」にあります。
これは、単に「印刷する技術」ではありません。写真の製版から発展した「微細なパターンを精密に描く技術」や、インクを均一に塗る「精密なコーティング技術」など、印刷プロセスで培われた基盤技術の総称です。
TOPPANの凄みは、この万能エンジンとも言える「印刷テクノロジー」を、全く異なる分野へ応用展開してきた点にあります。
このように、自社の技術的な強みを核として、関連性の高い分野へと事業を着実に拡大していく「同心円的多角化」こそが、TOPPANの成功モデルです。この「技術の堀」は非常に深く、IT企業がビジネスモデルだけで簡単に真似できるものではありません。
成功の秘密②:AIへの本気度とオープンな戦略
そして、TOPPANの未来を創るもう一つの強力なエンジンが「AI」です。彼らはAIを全社的な成長戦略の核に据え、驚くほど積極的に投資と開発を進めています。
そのアプローチは、特定の巨大テック企業に依存しない、「自社開発」と「マルチパートナー戦略」の組み合わせが特徴です。
ベンチャー企業と創る、新しいミライ|TOPPAN STORIES|TOPPANホールディングス株式会社
- 強力な自社開発力: TOPPANは、顧客企業が安全に生成AIを使える「生成AI管理基盤」のような高度なサービスを自社で開発・提供しています。さらに、社内のプログラム開発業務に特化したAIを構築し、開発時間を最大70%も削減するなど、自社の生産性向上にもAIをフル活用しています。
- 最適なパートナーとの協業: 自社の技術だけにとどまらず、外部の力も積極的に取り入れています。デジタルマーケティング分野ではGoogleと強力なパートナーシップを結び、AI議事録を開発する「オルツ」のような専門技術を持つスタートアップへは、自社のCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)を通じて出資・提携しています。