活性酸素が「体のサビ」と呼ばれる本当の理由。細胞への3つの攻撃とは?
なぜ活性酸素は危険なの?
「活性酸素は体に悪い」とよく聞きますが、その理由は、活性酸素が「非常に不安定で攻撃的」な性質を持っているためです。
物質は「電子」がペアになっていると安定しますが、活性酸素はペアでない電子(不対電子)を持つことが多く、非常に不安定です。そのため、安定するために手当たり次第、他の物質から電子を奪い取ろうとします。
電子を奪われた物質は「酸化された(サビた)」状態になり、本来の機能を失ってしまいます。これが、私たちの体の中で大切な細胞にダメージを与える「酸化ストレス」の正体です。
具体的に、活性酸素が細胞のどこを攻撃するのか見ていきましょう。
活性酸素による3大ダメージ
1. 細胞膜へのダメージ(脂質の酸化)
細胞膜は、細胞を守る大切な「バリア」であり、主に脂質(特に不飽和脂肪酸)でできています。活性酸素は、この脂質を格好のターゲットにします。
脂質が電子を奪われると「過酸化脂質」という、いわば「サビた油」に変わってしまいます。これが連鎖的に起こる(脂質の過酸化)と、細胞膜はボロボロになります。
その結果どうなる?
- 細胞膜が壊れ、バリア機能が失われる。
- 必要な栄養を取り込めず、老廃物を出せなくなる。
- 細胞の働きが落ち、最悪の場合は細胞が死んでしまう。
2. DNAへのダメージ(遺伝子のエラー)
DNAは、私たちの体の「設計図」とも言える最も重要な情報です。もし設計図にエラーが起きたら、大変なことになります。
活性酸素の中でも特に攻撃力の高い「ヒドロキシラジカル」は、この設計図を直接攻撃します。
DNAの文字(塩基)の一つである「グアニン(G)」が攻撃されると、「8-オキソグアニン」という"間違った文字"に書き換えられてしまいます。
本来、設計図をコピー(複製)するとき、Gは「シトシン(C)」とペアになるルールです。しかし、間違った文字(8-オキソグアニン)は、Gのふりをして「チミン(T)」とペアを作ってしまいます。これが「遺伝子のコピーミス(遺伝子変異)」です。
もちろん、私たちの体にはこの間違いを修復する機能がありますが、修復が追いつかなくなるとエラーが蓄積していきます。
その結果どうなる?
- 遺伝子変異が蓄積する。
- 細胞のがん化を引き起こす原因になる。
- 細胞の正常な機能が失われ、老化が加速する。
3. タンパク質へのダメージ(機能不全)
タンパク質は、筋肉や皮膚を作る材料であると同時に、消化や代謝を担う「酵素」や、情報を伝える「ホルモン」など、体を動かすための「精密な部品」でもあります。
活性酸素は、この精密な部品(タンパク質)も攻撃し、酸化させて変性させます。
その結果どうなる?
ダメージの蓄積が「病気」や「老化」につながる
このように、細胞膜(バリア)、DNA(設計図)、タンパク質(部品)が同時にダメージを受けると、細胞は正常に機能できなくなります。
エネルギー工場であるミトコンドリアまで傷つくと、細胞は自ら死を選んだり(アポトーシス)、壊れて死んだり(ネクローシス)し、組織や臓器全体の機能低下につながります。
この「酸化ストレス」状態が長く続くことが、多くの病気や不調の原因と考えられています。
まとめ:活性酸素は「諸刃の剣」
活性酸素は、細胞の大切な部分(脂質・DNA・タンパク質)を無差別に攻撃し、老化や病気のリスクを高めます。
しかし、活性酸素がすべて悪者というわけではありません。実は、免疫細胞がウイルスや細菌と戦う際、活性酸素を「武器」として使って病原体を殺菌しているのです。
大切なのは、「活性酸素が増えすぎないようにバランスを保つこと」。
酸化ストレスに陥らないようにすることが、健康維持のカギとなります。