「活性酸素は体に悪い」と聞いたことはありませんか?
その理由は、活性酸素が非常に反応しやすく、不安定な性質を持っているためです。この性質が、私たちの体の中で大切な分子と簡単に反応し、細胞にダメージを与えてしまうのです。
では、具体的に活性酸素がどのように私たちの体を傷つけるのか、詳しく見ていきましょう。
1. 細胞膜へのダメージ(脂質の過酸化)
細胞膜は、細胞の内と外を仕切る重要なバリアで、主に**脂質(とくに不飽和脂肪酸)**でできています。
活性酸素はこの脂質と反応し、「脂質の過酸化」という現象を引き起こします。
その結果:
細胞膜が壊れてしまう
必要な物質の出入りが正常に行えなくなる
細胞の働きが落ち、最悪の場合は死んでしまう
2. DNAへのダメージ(遺伝子の変異)
DNAは、私たちの体の設計図とも言える存在です。
活性酸素のなかに、ヒドロキシラジカルというものがあります。これは、DNAの構成成分の一つであるグアニンにくっついて、8-オキソグアニンというものを作ります。もともと、グアニンはシトシンと対合しています。ところが、8-オキソグアニンはチミンと対合します。その結果、遺伝子が変異します。この8-オキソグアニンを取り除く仕組みを人間は持っています。その仕組みが壊れると遺伝子の変異が増えて癌が起きやすくなります。
その結果:
遺伝子変異が起こる
がんの原因になる
老化のスピードが加速することもあります
3. タンパク質へのダメージ(機能不全)
タンパク質は、酵素、筋肉、ホルモンなど、体のあらゆる働きに関わっています。
活性酸素は、タンパク質を構成するアミノ酸を酸化し、その形や機能を変えてしまうのです。
その結果:
酵素としての働きがなくなる
細胞の構造が不安定になる
神経細胞などに異常が起こり、アルツハイマー病やパーキンソン病の一因になると考えられています
4. 細胞の働きが低下し、細胞死を引き起こす
こうしたダメージが積み重なると、細胞全体の働きが落ちていきます。
特に、エネルギーを作り出すミトコンドリアが傷つくと、細胞は正常に動けなくなります。
最終的に:
細胞が**アポトーシス(自然な細胞死)**や
**ネクローシス(破壊による死)**を起こし
組織や臓器の働きが弱まる原因になります
活性酸素が関係する主な病気や現象
このように、活性酸素によるダメージが体のあちこちに広がることで、「酸化ストレス」という状態に陥ります。
これが、以下のような多くの病気や不調の原因と考えられています。
老化の加速:細胞のダメージが蓄積して機能が低下
がん:DNAの損傷による遺伝子変異が、がん細胞の増殖を助ける
生活習慣病:動脈硬化、糖尿病、高血圧などに関与
神経の病気:アルツハイマー病、パーキンソン病、ALSなど
炎症性疾患:リウマチなど、慢性的な炎症を悪化させる
心血管疾患:血流が一時止まり再開する際に活性酸素が発生し、心臓や血管を傷つける
まとめ:活性酸素と上手につきあうために
活性酸素は、脂質・DNA・タンパク質といった体に欠かせない分子を傷つけ、細胞の働きを低下させたり死滅させたりします。これが積み重なることで、老化やさまざまな病気のリスクが高まるのです。
ただし、活性酸素がすべて悪いわけではありません。
実は、免疫細胞がウイルスや細菌と戦うときにも活性酸素が活躍しています。免疫細胞は活性酸素を出してウイルスや細菌を殺します。
大切なのは、「活性酸素が増えすぎないようにバランスを保つこと」。
つまり、酸化ストレスに陥らないようにすることが健康維持のカギなのです。
今日の一句
ストレスが 生む活性の 酸素たち 静かに蝕む 命の設計