私たちが日々感じるストレスは、心だけでなく体にも大きな影響を与えています。
そのひとつが、強いストレスで、体内で「活性酸素」が増えてしまうことです。
活性酸素は、酸素に電子が付いてできるもので、一つの物質ではありません。スーパーオキシド、過酸化水素(薄めて消毒液に使われる)や、すごく危険なヒドロキシラジカルなどがあります。それで、厳密には活性酸素種と呼ばれます。
活性酸素は、少量であれば体を守る働きもする物質ですが、増えすぎると細胞を傷つけ、老化や病気の原因にもなる厄介な存在。では、なぜストレスを感じると活性酸素が増えるのでしょうか?
その仕組みをわかりやすく解説していきます。
ミトコンドリアとストレスの深い関係
私たちの体の細胞には、「ミトコンドリア」という小さなエネルギー工場があり、酸素を使ってATP(エネルギー)を生み出しています。この過程で、実は少量の活性酸素も自然に発生しています。使われる酸素の2パーセントくらいが、活性酸素になります。
しかし、強いストレスを受けると、ミトコンドリアの働きに異常が起こります。
ポイントは、細胞内のカルシウム濃度が上昇すること。
ストレスを受けると、体内では「コルチゾール」などのストレスホルモンが分泌され、それが細胞内のカルシウムを増やしてしまうのです。
ミトコンドリアにカルシウムが過剰に取り込まれると、電子伝達系というエネルギー生成の仕組みが乱れ、電子が漏れ出すようになります。
この漏れた電子が酸素と反応すると、「スーパーオキシド」という活性酸素が大量に発生します。
つまり、ストレスがかかると、エネルギーを生み出すはずのミトコンドリアが、活性酸素の発生源に変わってしまうのです。
ストレスホルモンと炎症も活性酸素を増やす
ミトコンドリアの乱れに加え、ストレス時には他にもさまざまな要因が重なって、活性酸素が増えていきます。以下にそれらの要因について説明します。
● カテコールアミンの分泌
ストレスを感じると、アドレナリンやノルアドレナリンといった「カテコールアミン」というホルモンが分泌されます。
これらが代謝される過程でも活性酸素が発生し、また血管の収縮と拡張を繰り返すことで、酸化ストレスが高まります。
● 炎症反応の促進
慢性的なストレスは、体内で慢性炎症を引き起こしやすくなります。炎症が起こると、免疫細胞が活性化され、それに伴い活性酸素が大量に放出されます。これは、もともと病原体を攻撃するための反応ですが、行き過ぎると自分自身の細胞まで傷つけてしまうのです。
抗酸化システムもダウンする
私たちの体には、活性酸素の害を抑えるための「抗酸化システム」が備わっています。抗酸化酵素や、ビタミンC・Eなどの抗酸化物質が、日々活性酸素と戦ってくれているのです。
しかし、ストレスが長く続くとこのシステムの働きが低下し、活性酸素の分解が追いつかなくなってしまいます。すると体内に活性酸素が蓄積し、細胞に深刻なダメージを与えるようになります。
まとめ:ストレスは活性酸素を増やす複数のルートを持つストレスが活性酸素を増やす原因は、以下のように複数あります:
ミトコンドリアの機能異常による活性酸素の過剰生成
ストレスホルモンの過剰分泌と代謝
慢性炎症による免疫細胞の活性化
抗酸化システムの機能低下
このように、ストレスが活性酸素の「発生・増加・蓄積」に大きく関わっていることがわかります。
健康のために、ストレスケアを始めよう
ストレスそのものを完全になくすことは難しいですが、**「どう向き合い、どうケアするか」**がとても大切です。
適度な運動
適度な運動は、私たちの体に備わっている抗酸化酵素の働きを活性化させます。これにより、体内で発生した活性酸素を効率的に無害化する能力が高まり、結果として活性酸素によるダメージから体を守る抵抗力を高めることができるのです。
つまり、適度な運動は、ストレスによって増えがちな活性酸素を抑制し、酸化ストレスから体を守るバリアのような役割を果たすと言えるでしょう。
深呼吸や瞑想などで、こまめに気持ちをリセット
睡眠・栄養・運動のバランスを意識する
趣味やリラックスタイムを大切にする
無理をため込まず、人に相談する習慣を
活性酸素の害を防ぎ、心も体も元気に保つために、日常生活の中でできる小さな工夫から始めてみましょう。
今日の一句
ストレスで 活性酸素 湧き出でて 身体を冒す こころやすけに