日本の建設業界のトップ企業と聞いて、多くの人は「スーパーゼネコン」と呼ばれる巨大総合建設会社を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、連結売上高で見ると、その頂点に立つのは、実は大和ハウス工業なのです。
私もその事実を知り、非常に興味を惹かれました。 戦後、シベリア抑留を経験した創業者が、「すぐに建てられる丈夫な住宅を」という想いで日本初のプレハブ住宅を世に出した会社が、なぜここまで巨大な存在になれたのか。その成功の軌跡を調べてみると、明確な戦略が見えてきました。以下は芳井敬一社長のインタビューで。それに参照しながらこの記事を書いています。
【この記事でわかる】大和ハウス成功の3つの鍵
強さの源泉①:圧倒的な規模を生んだ「多角化戦略」
大和ハウス工業の最大の強みは、その連結売上高5兆円を超える圧倒的な事業規模です。これを可能にしたのが、「多角化」という経営戦略でした。以下の記事もそれについて触れています。
戸建て住宅という創業の柱を大切にしながらも、その領域にとどまることなく、次々と事業の柱を打ち立てていったのです。
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住宅系事業:戸建て住宅、賃貸住宅(D-room)、マンション
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その他:ホテル(ダイワロイヤルホテルなど)、環境エネルギー事業、ホームセンターなど
特に、景気の波に強い物流施設や商業施設といった「事業用不動産」に強みを持つ点が、他の住宅メーカーとの大きな差別化要因となり、安定した収益基盤を築いています。
成長のエンジン②:国内外を攻める、大胆な「M&A戦略」
多角化と並ぶもう一つの成長エンジンが、積極的なM&A(企業の合併・買収)です。
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国内でのM&A 2012年に準大手ゼネコンのフジタを買収。これにより、大規模建築物への対応力が飛躍的に高まり、住宅メーカーから「総合建設業」へと大きく飛躍しました。
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海外でのM&A 国内市場の成熟を見据え、海外へも積極的に進出。特に北米市場では、有力な住宅建設会社を次々と買収しています。最近もプレステージ社の買収の記事が出ています。
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スタンレー・マーチン社(米国)
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トゥルーマーク・カンパニーズ社(米国)
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キャッスルロック・コミュニティーズ社(米国)
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これらのM&Aにより、海外売上高は年間9,000億円を超える規模にまで成長。将来的には海外事業だけで5兆円を目指すという、壮大なビジョンを掲げています。
成長を牽引した「2人のリーダー」
この急成長は、強力なリーダーシップなくしては成し得ませんでした。
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創業者・石橋伸夫 氏 シベリア抑留の経験から、「日本の人々に、丈夫で住みやすい家を」という顧客第一の精神で会社を設立。その想いは、今も大和ハウスのDNAとして受け継がれています。
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中興の祖・樋口武男 氏 2001年に社長に就任後、本記事で紹介した多角化やM&Aを強力に推進。就任時に約1兆円だった売上高を、退任時には4兆円近くまで引き上げた伝説的な経営者です。
樋口氏が築いた成長路線が、現在の大和ハウスの圧倒的な地位の礎となっています。
未来への投資:年間100億円の研究開発
大和ハウスは、現在の成功に安住することなく、未来への投資も怠りません。年間100億円規模の研究開発費を投じ、住宅性能の向上はもちろん、建築の工業化、DX推進、環境技術、スマートホームといった次世代の技術革新に取り組んでいます。
まとめ:大和ハウスは、次の成長ステージへ進めるか
大和ハウス工業の成功は、創業者の精神を礎に、**「多角化」と「M&A」**という両輪を、強力なリーダーシップで回し続けた結果です。
課題を乗り越え、次の成長ステージへと進むことができるのか。日本最大の建設企業の次なる一手から、目が離せません。