月影

日々の雑感

何故トライアルは実店舗か。

トライアルホールディングスは、Amazonのようなネット販売(EC)にはあまり注力していない一方で、実店舗にこだわる戦略を取っています。ネット販売も万能ではないですね。その理由を調べてみました。

 

■ なぜAmazonのようなネット販売を強化しないのか?

1. トライアルは「リアルデータ」を重視している

スマートカートなどを通じて収集できる、**店舗内での顧客のリアルな行動データ(棚の前での滞在時間、移動ルート、商品比較など)**は、ECでは取得できません。
トライアルの本質は、「データドリブン経営」ですが、そのデータは実店舗でこそ価値が高いと考えています。

 

2. 「日常の買い物」はECに向かないという現実的判断

トライアルの主力は生鮮食品・日用品・雑貨などの毎日の消費財です。食品の売り上げが75%です。これらは以下の理由でECと相性が悪いとされています:

配送コストが割高
品質(特に生鮮品)への信頼が低い
即時性や「ついで買い」ニーズが強い


特に地方の高齢者層や車移動前提の客層では、ECよりリアル店舗の方が使いやすい。

 

3. 「価格の安さ」はリアル店舗だから実現できる

トライアルは物流・在庫・人件費の効率化で価格を下げていますが、ECにすると逆にコストが増える面もあります:

個別配送の負担
梱包・返品対応コスト


Amazonのような「超大量流通」とは前提条件が異なるため、中途半端なEC化はむしろ非効率になります。

 

■ 実店舗にこだわる理由

1. 「リアル×テクノロジー」による競争優位

スマートショッピングカート、顔認証、AIカメラなど、トライアルが開発するテクノロジーはリアル空間の改善に特化。
実店舗は単なる販売場所ではなく、「リアルデータの収集基地」でもある。

 

2. 地域密着・地方経済支援としての役割

地方都市や過疎地域では、ネット販売よりもリアル店舗の存在そのものがライフライン
トライアルは「地方からITを導入し、生活基盤を強化する」という社会的ミッションを持っています。

 

3. 買い物体験そのものの価値を再定義

トライアルは、「店舗=ただの売り場」ではなく、「行くのが楽しい、ついでに学べる、データも取れる場所」と考えています。
ECでは得られない、リアルな感情・比較・発見・体験を重視している。

 

■ 将来的にECに参入する可能性は?

完全な「Amazon型EC」はやらない可能性が高いです。
ただし、次のような**リアルとネットの融合(オムニチャネル)**的な形態は拡大するかもしれません:

アプリ注文+店舗受取(BOPIS)
スマートカートを通じた個別クーポンや通知
サブスク型の定期購入(例:毎週特定商品を自動受け取り)

 

■ 結論

トライアルは「ECではなく、実店舗の進化」でAmazonに対抗するユニークな存在です。

Amazonがネット上での最適化を追求するなら、
トライアルはリアルの現場での最適化と効率化を極めようとしています。

 

今日の一句

流行れど ネットの世にも 食のもの 店にて買わむ 目と舌信じ