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日々の雑感

お米の値段はなぜ上がった?米価高騰の4つの原因と今後の見通しを徹底解説

「最近、スーパーでお米の値段が上がったな…」 毎日の食卓に欠かせないお米だからこそ、価格の上昇は家計に直結する大きな問題です。

昨年からの猛暑のせい?それとも、何か他に理由があるのでしょうか? 実は、この米価高騰の裏には、天候だけでなく、日本の農業が抱える構造的な問題や、国の政策までが複雑に絡み合っています。この記事では、その謎を一つずつ解き明かしていきます。

 

なぜ?お米の値段が上がる「4つの原因」

 

「物の値段は需要と供給で決まる」のが経済の基本です。つまり、お米の値段が上がっている直接の原因は、**「お米の供給量(生産量)が、私たちの需要に追いつかず、足りなくなっている」**からです。

では、なぜお米が足りなくなっているのでしょうか?それには、大きく4つの原因が考えられます。

 

原因①:そもそも、お米を作る農家さんが減っている

 

日本の農業は、深刻な高齢化と後継者不足に直面しています。特に、新規で農業を始めるのは非常にハードルが高いのが現状です。農地は、原則として農業者しか購入・借用できず、初期投資も大きいため、新たに参入する若者が増えにくい構造になっています。

結果として、お米を作る人の数そのものが、年々減り続けているのです。

 

原因②:2023年の「記録的な猛暑」による品質低下

 

2023年の夏、日本は記録的な猛暑に見舞われました。この暑さは、お米の品質に大きな影響を与え、収穫量が落ち込む原因となりました。天候不順は、お米の供給を不安定にする大きな要因の一つです。

 

意外な原因③:国がお金を払って「米作りを減らす」政策

 

「お米が足りないなら、もっと作ればいいのに」と思いますよね。しかし、実は国(農林水産省)は、主食用米から他の作物(飼料用米や麦、大豆など)へ転換する農家に対して、年間3,000億円規模の補助金を出して、米作りを減らすよう促しています。

これは、長年続いていた「お米の作りすぎ(生産過剰)」による価格下落を防ぎ、農家の収入を安定させるための政策でした。しかし、需要と供給のバランスが崩れ始めた今、この政策が逆に価格高騰の一因になっているのでは、という皮肉な状況が生まれているのです。

 

原因④:肥料や燃料など「作るコスト」の高騰

 

ウクライナ情勢などを背景に、化学肥料や農業機械を動かす燃料、ビニールハウスの暖房費など、あらゆる輸入資材の価格が高騰しています。作るためのコストが上がれば、それが製品の価格に反映されるのは避けられません。

 

農業の担い手は「個人」から「法人」へ

 

作り手が減っている一方で、日本の農業生産量全体が壊滅的に落ち込んでいるわけではありません。その背景には、**「農業法人」**の存在感の高まりがあります。

農業法人とは、株式会社などの形で効率的な農業経営を行う組織です。最新技術(スマート農業)を導入したり、コスト管理を徹底したり、市場価格が高いタイミングで販売するマーケティング力に長けています。

今回の米価高騰は、こうした経営力のある法人にとっては、利益を最大化するチャンスとなっています。その一方で、昔ながらの個人農家との経営格差がさらに広がるのではないか、という懸念も生まれています。

 

今後の米価と、日本の「食料安全保障」

 

今後の米価は、今年の天候と秋の収穫量に大きく左右されます。もし生産量が回復すれば、価格は徐々に落ち着く可能性があります。また、国が保有する備蓄米の放出や、MA米(国際約束で輸入するお米)の市場への供給なども、価格安定の鍵を握ります。

そして、この問題を考える上で最も重要なのが**「食料安全保障」**という視点です。

食料安全保障とは、**「どんな時でも、国民が食べるものに困らない状態を確保すること」**を指します。

日本は食料の多くを輸入に頼っていますが、国際情勢の悪化や大規模災害で輸入がストップすれば、私たちの食卓は大きな危機に瀕します。そんな「いざ」という時に、国民が飢えることのないための最後の砦となるのが、国内で生産できる主食、お米なのです。

目先のお米の値段だけでなく、10年後、20年後も、私たちが安心してお米を食べ続けられる国であるために、日本の農業がどうあるべきか。今回の米価高騰は、私たち一人ひとりにその重要性を問いかけていると言えるでしょう。