この記事では、仏教で言うところの煩悩と脳の仕組みの関連を消化することを目的としています。
**【ご注意】**本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を代替するものではありません。心身の健康に不安のある方は、必ず医師や専門家にご相談ください。
第1章:仏教が説く「煩悩」の正体
無明煩悩しげくして 塵数(じんじゅ)のごとく遍満す
愛憎違順(あいぞういじゅん)することは 高峰岳山にことならず
これは親鸞聖人が高齢になってから、自分の心を深く見つめて書いたと言われる一節です。前半では、真理をわかっていない上にさまざまな欲が常に心に湧き起こる様子を、まるでほこりがそこらじゅうに舞い散るかのように表現しています。後半では、自分に好意を持つ人には好意を感じ、憎しみを向ける人には憎しみを感じてしまうという自分の心が相手の態度に左右される姿が人間の性質であると述べています。これは高い山々のように、自然の摂理として存在するものだと説いています。
仏教では、煩悩の根源となる感情を三毒と呼びます。これは欲望や執着を表す「貪」、怒りや憎しみを表す「瞋」、そして真理を理解できない心である「痴」です。また日常的な欲望として、財欲、色欲、食欲、名誉欲、睡眠欲という五欲が存在します。これらの欲望が満たされないとき、私たちは悩みや苦しみを感じます。親鸞聖人もその苦悩を正直に認め、「煩悩は死ぬまで消えることがない」と告白しています。
この親鸞聖人の深い人間洞察は、驚くべきことに、現代の脳科学が解き明かしつつある心の仕組みと通じるものがあります。本記事では、仏教が800年以上前から見つめてきた**「煩悩」の正体を、最新の脳科学の知見を借りながら探求し、**私たちが自らの心とどう向き合っていくべきかのヒントを探ります。
現代の脳科学の観点からは、人間の感情や行動の制御には、大脳辺縁系(扁桃体や海馬を含む)と前頭前皮質の相互作用が重要な役割を果たしています。扁桃体は特に恐怖や不安といった感情の処理に関与し、海馬は記憶の形成と保持に重要な働きをしています。これらの脳の部位は進化の過程で発達し、現代においても私たちの感情や行動の調整に重要な役割を果たしています。2016年1月30日の日経新聞で脳の2つの部分の発達差が行動に影響するという記事がありリンクしておきます。
扁桃体と海馬は密接に連携しており、強い感情を伴う出来事の記憶形成に関与することが知られています。下に情動と脳(扁桃体、海馬)に関する研究組織(CREST)のリンクを貼っておきます。
海馬の機能維持には適切な血流が必要で、慢性的な低酸素状態は海馬の機能低下を引き起こす可能性があります。認知機能の維持には、適度な運動による脳血流の改善、バランスの取れた食事、そして外国語学習や新しい活動への挑戦など、認知的な刺激を取り入れることが有効である可能性が多くの研究で示唆されています。以下に東京都健康長寿医療センター研究所の血流と脳の働きに関する情報をリンクします。
第3章:心を整えるための科学的アプローチ
研究によれば、規則的な瞑想や呼吸法の実践は、前頭前皮質の活動を活性化し、扁桃体の過剰な反応を抑制する可能性が示唆されています。このように、仏教で説かれてきた心の働きについての洞察と現代の神経科学の知見には、いくつかの興味深い接点が見られます。以下にNIKKEIリスキリングの脳と瞑想に関する記事をリンクします。
まとめ:仏教の知恵と科学の知見の融合
お釈迦様が始めた仏教が、2000年以上たち、その教えが脳の科学から再認識されてきたのは喜ばしいことです。ます、ます研究が進むことを期待したいところです。新しい情報が入りましたら更新する予定です。もしご存じの方がおられましたら下のコメントで教えてください。